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「こぉらぁっ!!いつまで寝てんだ!!さっさと起き・・・って、アレ?」
いつものように僚を起こすために、ハンマー片手に部屋に殴りこんだものの
香はキョトンとした顔で、「うっそ」と小さくつぶやいた
それもそのはず、普段であれば怒鳴って殴ってハンマーでつぶしてようやく起きる男が
むくりと上体を起こした状態で、ぼんやりと虚空を眺めていたのだ
思わず頬をつねってこれが現実か確認するもの、確かに痛みがあり、香はマジマジと僚を眺めた
「め、珍しいじゃない、アンタが自分から起きてるなんて・・・きょ、今日は雨でも降るのかしらね?」
「・・・・ん」
思いのほか大きく動揺してる自分に香自身戸惑いながらも、なんとか平然を装うとするが
わずかに声が上ずり、どもってしまう
そんな香を見れば、平時であればこれでもかっ!!とからかう僚も僚で、眠そうに小さく返事をするのみ
いつもの情景に慣れてしまった香としては、どうにも違和感がぬぐい切れず、困惑するも
一応目的は達したとして「じゃ、じゃぁ、はやく降りてきなさいよね」と言い部屋を出ようとした
・・・・が
ぼんやりと虚空を眺めていた黒曜の目が香をとらえると、同時に香は足を止めた
普段のおちゃらけている目でも、仕事のときの真剣な目とも違うソレに
香は無意識の内に息を飲む
すると、まるでそれを合図にでもするかのように、僚は猫か犬でも呼ぶかのように
こいこいっと手で香を手招いた
「な・・・なによ?・・・って、うぎゃっ!!?」
しどろもどろながらに、香が僚に近づくと、僚は何も言わずに太いその腕を香の腰絡め
そしてそのまま自分のベッドに香を引き込んだ
(・・・・な、なななななななな、なぁぁああああっ!!!??)
普段自分を女扱いしない男のこの行動に、香は今度こそ目を白黒させた
あまりの驚きにすでに声すら出させず、真っ赤な顔でぐるぐると目をまわした
・・・が、しばらくすると、聞きなれた「ぐごー・・・ぐがっ!」というイビキが聞こえて
一気に脱力した
「・・・・・寝ぼけてたんかい」
よくよく考えればすぐにわかりそうなものを、『僚が朝起きてる』という
普段と違う光景に驚きすぎてすぐにわからなかった自分に、「どんだけ焦ってたのよ、あたし」と
呆れの溜息を吐き出した
見上げればいつも通り、天下泰平とでもいわんばかりに呑気に眠る男の寝顔
毎度毎度なんで自分ばかりがこの男に振り回されるのか、と理不尽さを感じつつも
なんとなくハンマーで憂さ晴らしをする気にもなれず、香はポスッと音をたてて男の厚い胸板に頭を乗せた
「・・・・ま、たまには・・・ね」
太い腕がまるで自分を守るように絡まっている
「まるで、甘い鎖みたい」なんて乙女チックな連想に苦笑しながら
香もゆっくりと瞼を下ろした
(・・・目が覚めたら、また一騒動ありそうよねぇ・・・)
おそらくバカみたいに騒ぎ立てて「覚えてないっ!」と言い切るであろう男を想像し
口元にうっすらと笑みを浮かべ、僚を追うように香もまた、夢の世界へと向かい始めた
そして、目が覚めたとき
香の想像通り、騒ぎたて、「俺は知らんぞっ!!」と言い張る男が
内心「・・・・・次は、夜寝るときにやってみっかな」なんて企んでいたというのは
また別のお話
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