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メリッサ

 

悲しい記憶がある
辛い記憶がある
涙を流し、喘ぎ、倒れそうになった日

 

その当日はなんでもない風を装ったのに
平然としてみせたのに
なんでだろう・・・時折、どうしようもなく、悲しくなる



そういうときに限って、アイツはあたしのそばにいる
理由を問うてもはぐらかされて、言葉をかけることなく、ただ黙ってそばにいる
そして、必ずといっていいほど、悲しい目をしている



そばにいることを決めたのは僚でも
その目をさせてるのは・・・間違いなく、あたし
そして、その目と温もりに癒されてるのも、間違いなくあたし




(いっそ突き放してくれたらいいのに・・・)




甘やかさないで
謝罪や贖罪など投げ捨てて
あたしを放り出してくれたらいいのに・・・



そうじゃないと・・・あたしは・・・・




「・・・・僚」




そばにいる僚の近くに行き、寄りかかる
確かに感じる温もりと、鼓動
そして「・・・なんだ?」という声に、涙が出そうなほどに嬉しくなる




『・・・・・・・ごめん』





言葉にはしないで、口でだけ謝罪の言葉を形作る
僚の優しさに甘えて、僚を傷つける
僚の優しさがほしくて、僚のそばにいる
僚のそばにいたくて、僚を危険にさらす



大嫌い・・・こんな自分、大嫌い
・・・・・・・それでも




「好きよ・・・僚」





アンタを求めてしまう
ゆっくりと触れた唇の感触に、体が歓喜で震えるほどに
僚を求める自分を止められない
あの辛い記憶を、震える自分を言い訳にして、アンタを縛り付けてしまうほどに
アンタを愛してるのよ・・・僚・・・・




「・・・香?」





悲しい目があたしを映す
その目に映ってるのあたしを、あしたはマジマジと見る
綺麗な黒曜の瞳、その中に映るあたしは・・・・




「・・・なんで、泣いてンだよ」




ほろほろと、涙をこぼす
ぬぐうこともしないその涙を僚が優しく拭い去ろうとするのを
あたしは、その手を抑えることで押しとどめた




「アンタの手で、とどめをさしてくれたら・・・いいのに」




この手で、この唇で、この腕で、アンタ自身で
決着をつけてくれたらいいのに
決着をつけてほしいのに・・・・




「何の決着をつけてほしいんだ?」


「・・・・・わかんない」





そう、わからない
この関係を?この感情を?それとも、あたし自身を?
あたしは何を望んでるのか、あたしにもわからない
それを僚に求めてるなんて・・・意味不明な行動に、半笑いのへたくそな笑みを浮かべる




「・・・・香」




頬にある僚の手があたしを引き寄せ、そして唇が重なる
何度も、何度も、何度も重なる
あぁ、このまま酸欠で死んでしまうかもしれない、なんてぼんやりと考えていると
ふと、僚と視線が絡み合った




「もし、おまぁが救いなんつーものを求めてるなら、この世で最も最低な救いをくれてやるよ」


「・・・・・僚?」




悲しい目があたしを映す
黒曜の目があたしをとらえ、そして・・・・




「一生、俺のそばに居続けろ・・・バカなことも考えられないほどに、ただ俺だけを求め続けろ」




「そうしたら、地獄の先まで無理やり連れて行ってやる・・・どうだ、最低だろ?」





ゆっくりと笑みを作りながら言った僚は、まるで誘惑する悪魔のようで
けど、どこかで許しを請うような罪人のようでもあった




(なら、あたしは悪魔の誘惑に乗る愚かな女となり
そして、アンタの罪を許す聖女(マリア)・・・かしらね)




あたしの存在がアンタを苦しめる
アンタの存在にあたしが苦しむ
二人苦しみつづけるのなら、いっそアンタの『救い』に乗ってみるのもいいかもしれない
あたしは余計なことなど考えずにアンタを求め続ける
求めて、求めて、たくさん涙も血も流して
そして、最後の最後に、アンタと一緒に笑ってやるわ




「この世で一番最低で、そして贅沢な救いだわ」




その口にすれば、僚は満ち足りたような笑みを浮かべ
再びあたしの呼吸を止めるようなキスをした



 

 

「メリッサ」 song by ポルノグラフィティ
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