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モザイクロール




今回の作品は、ブラックな部分、病んでいる様子を伺わせるものがあります
流血・自傷などの表現はありません。
ただ、そういうブラックな表現が苦手な方、ブラックな面を見せている二人が苦手な方は
続きを読まないようお願い申し上げます




また、この作品は 「愛迷エレジー」 「弱虫モンブラン」 の続編です
できましたら、 最初は「愛迷エレジー」からお読みいただきますようお願い申し上げます














俺の吐き出す言葉はいつもアイツを傷つける

---アイツから吐き出される言葉にいつもあたしは傷をつくる




怒り、ハンマーで潰される瞬間、わずかに見せる香の苦しみの表情に安心感を覚える

---怒ってハンマーして憂さ晴らし、でも、本当は・・・・苦しかった




優しさも思いやりも無い、できやしない・・・だが、求めずにはいられなかった

---アイツにとってあたしは「女」じゃない、それは誇りでもあり・・・痛みでもあった



手を離さなければいけない存在、求めてなど・・・あってはならない・・・

--- 手を離したくなんてない存在、できればずっと・・・一緒に・・・




だから、俺を求めるな・・・・俺の元から・・・去ってくれ

--- 痛くても、苦しくてもいい・・・だから置いていかないで・・・




そもそもお前一人に縛られるなんてまっぴらなんだよ、俺には刹那的な快楽がお似合い・・・そうだろ?

--- たった一人に縛られる男じゃない、でも、無視しないで、あたしを・・・見て・・・





なぜ逃げない?最低だろ?馬鹿げてるだろ?お前・・・俺のどこがいいわけ?

--- なんで?なんで、そんなにあたしを拒絶するの?あたしがパートナーだから?アニキの妹だから?




逃げろよ、俺はお前に優しくなんてできない・・・ごくありきたりな幸せもやれない、最低野郎なんだぜ?

--- 離れたくないよ、アンタがくれないなら優しさなんて求めない・・・だから、お願い・・・傍にいさせてよ





なぁ、なんで逃げねぇんだよ・・・なんで俺を責めないんだよ?
ハンマー振り回すくせに、どうしてそうやって背負い込むんだよ・・・なんで、そんな顔すんだよ

--- 求めないから、泣かないから、辛さなんて覚えてないから・・・・
  「女」として見て欲しいって願わないから・・・だから・・・・・




手放そうとして、何度も何度も傷つけて
それでも、その傷つく顔に安堵して
去ることの無い女に戸惑う男


離れたくない、一緒にいたい
でも苦しくて苦しくて・・・どうしようもなくて
壊れていく女


男は去らぬ女に諦め、そして、自分をも諦める
何もかもを諦め・・・そして、認めることによって
・・・・押さえていた「欲望」を解放する


女は男の傍を離れられないことを自覚し望みながらも
男の言動や行動に傷ついていき・・・放棄すること選んだ
・・・・手に入れたのは解放という名の「自由」

 

追っていたのは女

逃げていたのは男

だが、女は男を追う足を止めその場に立ち止まり、己の殻に閉じこもり

男は殻に閉じこもる女の傍でその様子を眺め、己の手が届かないことへ焦燥を覚え・・・・・




「お前、それでいいわけ?」


暗い部屋で横たわる女に、男が声をかける
女は笑みを浮べながら「何が?」とおかしそうに逆に問いかけた
感情の篭らない人形のような笑みに、男は眉をひそめながら
一歩一歩女へと近づく


「馬鹿だよなぁ、なぁんでそんなことしてまで俺の傍にいたいんだか・・・」

「・・・・さっきから、何言ってんの?」

「ただのお人形のお前に、俺は興味なんざ惹かれんぞ」


ピクリと反応する女
そんな女を静かに見下ろす男

しばらく沈黙が流れる
長いのか、それとも短いのか・・・
ただお互いの息をする音しか聞こえない空間で
どちらも何も言わずにお互いを見つめ続け・・・そして・・・・


「じゃぁ、・・・・どうすればいいの?」


「アンタから離れられない・・・・でも、見てもらいたい・・・そう望むあたしはどうすればいいの?」


「僚の一言に、ちょっとした仕草に振りまわされるあたしは・・・」


淡々とした、感情の起伏の無い声が響き
ガラス球のような瞳が揺れる
奥底に仕舞いこまれた「光」が揺れる
自分の吐き出した言葉に、目の前で自分を見ている男に
香は揺れて・・・揺れて・・・揺れ続けて・・・・



「・・・ねぇ、こんなこと言う「女」・・・僚は・・・いらないでしょ?」

「だから殺すの、捨てるの・・・それが一番いいことだから」



うっすらと浮べた笑みは、とても鮮やかだった
ガラス球のようで、それでいて、光をも宿したような瞳を細め
同意を求めるように微かに首を傾げる女を
男はただ、黙って見つめ・・・・


「確かに・・・いらんな」


膝をつき、女と同じ目線にあわせ言い放つ言葉に女はさらに笑みを深める
光は消え行く・・・揺れが収まる・・・ガラス球に戻っていく・・・だが


「けどな、それは『ただの女』の場合なんだよ」

「・・・・・僚?」


掴まれた腕に、伝わるぬくもりに、射殺すような真っ直ぐな視線に
香の瞳が再び揺れ・・・・


「お前は・・・『ただの女』なんかじゃねぇんだろうが・・・・
ハンマー出すわ、簀巻きにするわ果てはこんぺいとうって・・・
俺の人生の中で一番わけわからんヤツを『ただの女』なんぞに区分できっかよ」


「・・・・でも、あたしは『女』でありたいと望んだの、・・・それこそ、契約違反じゃない?」


「だな・・・俺のパートナーは『ただの女』には務まらん
だが、同時に・・・・俺の『女』にも同じことが言えるわけよ」




「んで、両方とも『ただの女じゃない』・・・『槇村香』にしか、務まらんと思うんだが・・・
・・・・そこんとこ、おまぁはどう思う?」




瞳が、揺れる

体が、震える

涙が溢れ



そして・・・・・・・・・光が・・・・・・・・・



「・・・なに、それ?・・また・・・あたしに、もがけって言うわけ?・・・・しがみついて、がむしゃらになって、
アンタに傷つけられて・・・それでも・・・・それでも、アンタを好きな、あたしでいろって・・・
・・・・そういう風に言うわけ?」


顔を伏せて、次第に語気を荒くする香に対し
僚はなおも香を見つめ続けながら、口を開く



「傷つけねぇとは言わんし、おまぁを幸せになんてもんにもできやしねぇ
そんで・・・・・俺から逃げることも、認めない」


「どういう理屈よ・・・そんなの、あたしが損なだけじゃないっ!!
アンタ、あたしを本気で壊すつもりっ!?」


「壊させやしないさ」



叫ぶ香に、僚は嗤う
壊れた香とは違う
狂気を滲ませるようなその笑みに、香は背筋をぞっとさせ
そして・・・・見惚れた



「地獄みたいな場所で、これからも泣くこと間違い無しつーのは変わらんが・・・」



「その中で縛り上げて、雁字搦めにして、俺しか見えないようにして・・・・大事にするさ
逃げることなんて思いつかないほどに・・・な」



「だから・・・さ・・・」




「俺のオンナになってくれません?槇村香ちゃん?」




差し伸べられた手に
言葉に
目の前の男に


香は信じられないといわんばかりの顔をしながら
ポロリ・・・と一粒涙をこぼし・・・・・




「・・・・・・バッカみたい。ていうか、卑怯だし、遅すぎんのよ、アンタは」






満面の笑みを浮かべ、その手を取った


・・・・その目は、光に溢れ
もう、ガラス球のような、脆さはどこにも・・・無かった





モザイクロール byDECO*27 (sm11398357)



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