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夢を見る
とても、とてもなつかしい夢・・・
父さんがいて、アニキがいて、みんなで笑ってた夢
そして、アニキと2人で暮らしていた頃の夢
まるで順を追っていくかのように走馬灯のに流れていく夢
けれど、あるときから、あたしは知らない人に向って笑っていることが多くなった
ハンマーを振り回して、怒って、怒鳴って・・・そして、笑っていた
(あなたは・・・誰?)
手を伸ばして、そう問いかければ
その人はあたしに向かって振り返る
けれどまるでかすみがかかったようにその人の姿がはっきりしない
『・・・思い出さなくて、いい』
声が聞こえる
でも、その声もはっきりしない
男か女かもわからない
それがたまらなくじれったくて
いやいやと、首を横に振った・・・なのに
『忘れちまえ』
その人は手であたしの目を隠す
大きな手・・・アニキよりも大きな手
その手に縋ろうとした、「行かないで」と言おうとした・・・
けれど、その台詞は出ず、代わりに男の人の声だけがあたしの耳に残る・・・
『もう俺と関わるな・・・香』
その声を最後に、あたしは目を覚ました
ぼんやりとする思考の中、またあの夢を見たのだと
あの夢の中の人を知ることができなかったのだと知る
「・・・あなたは、誰?」
毎回夢に出てくるのに、わからな人
そして必ず・・・目が覚めると悲しくてしょうがなくなる
その証拠に起きるたびに、あたしの頬には涙の跡がくっきりと刻まれていた
「なんで、思い出せないの?」
大切な人なんでしょ?
大事な人なんでしょ?
なのに、どうして思い出せないの?
忘れてしまったの?なんでわからないの?
「・・・・また、美樹さんに聞いてみようかなぁ」
この夢をみて以来、ずっと相談に乗ってもらっている喫茶店のママさん
優しいママさんに甘えているのはわかってる
けれど、彼の姿を思い出すのは街中と、そしてキャッツの風景だけだから
彼女が何か知っているのはではないかと思い、ついつい聴いてしまう
「わからないって言ってるのに・・・迷惑かなぁ」
朝食の支度を食べて、簡単に家事を終わらせてから
軽い身支度をして出かける
あたしは、一定時期の記憶が無い
ある日突然、気がついたらキャッツ・アイという喫茶店にいて
ここ5、6年の記憶が無くなっていた
さすがに誰かわからないということは無くて良かったけれど
行くあても帰る家もわからないあたしに、喫茶店のマスター夫婦が何かと面倒をみてくれた
「・・・・なんで忘れちゃったんだろう、あたし」
ようやく慣れた道を歩きながら、ふと後ろを振り返った
「・・・・会いたいのに、な」
後ろに、あの人がいる気がしたから、ポツリと呟いてみた
それはきっと勘違いで、幻想
求めている人がそう簡単にいるわけもないと苦笑をこぼす
もしかしたら、あの人はアニキたちのようにもうこの世に居ない人なのかもしれない
誰か大事な人がいる人なのかもしれない
それこそ、思い出さない方がいい人なのかもしれない
それでも、知りたかった
会いたかった・・・どうしようもなく、会いたくて、たまらなかった
「・・・・・・会いたいよ」
この想いは日を重ねるごとに膨らんでいく
それこそ、もう限界だといわんばかりに・・・
でもこの想いを昇華させることができないから、する方法を知らないから・・・
まだ朝早い時間、あたし以外に人通はいない場所で
溢れる想いを吐き出すように、もう何度目ともわからぬ涙をこぼした
だから知らなかった、すぐ後ろの電柱に隠れるようにしてあなたがいることに
あなたがあたし以上に辛そうに顔を歪ませていることに
苦しげに「・・・香」とあたしの名を呼んでいることにも
あたしは・・・・・気づけなかった
*補足説明
香が僚の依頼によって美樹の催眠術によって『僚』に関する記憶を全部消されており
強制的に『僚』と別れさせられたものの、無意識の内に思い出そうと足掻いている話
そして、そんな香を影から見守っている僚の話
「あなたがいた森」 by樹海
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