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*この作品は「キミにKISS」の香サイドの話です
読んでいなくても支障はありませんが、もし気になる方は先にそちらをお読みください
ときどき、おかしな夢を見る
夜に僚があたしの部屋にやってくる夢
普段は3分しか持たないマジメ顔でじっとあたしを見て
そして、しばらくすると息を潜めるように「・・・香」とあたしの名を呼ぶ
あたしは『なぁに?』と返事をしたいけど、なんとなく毎回できない
だって、返事をしたらこの僚は消えてしまいそうだったから
だからあたしはただ黙って僚を見る
すると、僚は緊張した身体を緩めるように、静かに息を吐き出すと
あたしへと近づく・・・
いつも夢で僚はあたしにキスをする
けれど、それは唇じゃない
僚の唇が触れるのは耳の少し下・・・
夢なんだから唇にしてくれたっていいじゃないという文句をひとまず押し留める
優しく羽が触れるような感触
長いのか短いのかはわからないけれど、僚はあたしの耳の下に口付けると
あたしからわずかに距離を取り、髪をなでてくれる
それがたまらなく嬉しい
僚が触れてくれる
夢でもいい、こうして優しくしてくれる
髪を撫でてあたしの名前を呼んでくれる
(・・・幸せな夢)
嬉しくて、嬉しくて、泣いてしまいそうな夢・・・
例えこの後僚が部屋を出て行ってしまうとわかっていても
この一瞬のためなら、あたしはなんだって我慢できると思えた
長い間片思いをして、嫉妬して、たくさん迷惑もかけて
何度も離れてしまいそうになったあの背中を必死に追い続けてきた
(でもさ・・・・これでも結構限界だったりすんのよ?)
僚、アンタが好きよ
ずっとずっと、アンタのパートナーでいたい
アンタの傍に居続けたい
けど・・・やっぱり辛いのよ
アンタが好きだから、『女』として見られたいって思う
パートナーだけじゃいやなの、アンタの特別になりたい
アンタの一番近くにいたいの・・・
(・・・・夢でも、アンタは・・・あたしに触れてくれないの?
女として、見てくれないの・・・・?)
親友の「妹」じゃ嫌
預かり者も嫌
パートナーだけじゃもう我慢できないの・・・
(ねぇ・・・僚・・・あたしのこと)
「好き?」そう夢の中で尋ねようとした瞬間
「・・・・・香」
今まで感じたことのない部分に何かが触れた
それは柔らかくて、わずかに熱いもの
一瞬、夢とはいえ何が起きたのかわからなくて
心臓が一瞬止まるかと思った・・・・
どうすればいいんだろう
どうしたらいいんだろう
そう思っていたたのに
「・・・・・許せ」
僚の呟きに違う意味で、息が止まりそうになった
まるで、罪人が罪を告白し許しを請うているかのような悲壮な呟き・・・
(何を、考えているの・・・?)
夢の中の僚に問いかけたい
なんでそんな顔をするの、何がそんなに辛いの?
どんなアンタでもあたしは離れたりしない
アンタがアンタで居続ける限り、あたしはずっとアンタが好きなのよ
・・・ねぇ、そのくらいとっくに知ってるでしょ?僚?
でも言葉は出なくて・・・何も言えなくて
触れることもできなくて・・・そのまま僚は出て行ってしまった
「・・・ま・・・って・・・・」
やっと出た声と、伸ばした腕・・・
けれど目を覚ませばやっぱりそこに僚はいなくて
先ほどの僚があたしの見せる『夢』なのだと知って安堵も残念ともわからない
ため息を吐き出した・・・
「なにしてんだか・・・・たかが夢じゃない」
馬鹿馬鹿しい、自分の妄想で何を焦ってるんだろう
それこそ僚に知られたら間違いなくバカにされる
まだドクドクと激しく脈打つ心臓を落ち着かせるために
一度キッチンに下りて水でも飲もう・・・そう思ってベッドから降りようとした瞬間・・・
「・・・・ぇ?」
一瞬香った匂い
香水とアルコール・・・そして、硝煙の匂い
間違いなく、僚の・・・匂い
この匂いが今ここにあるはずがない
だって、今日は念入りに掃除をして
換気だって徹底してやった・・・だから、この匂いを今感じるはずが・・・
「え・・・え・・・ちょ、ちょっと、待って」
混乱する頭を抑えて、必死に冷静になろうとするのに上手くいかない
だって、あれは夢で
夢のはずで・・・夢じゃ・・・ない、と
「・・・・嘘、だよね?」
まさか、そんなはずない
いつものぬか喜びよ、そんなことあるはずないじゃない
そう自分に言い聞かせるのに
あたしは自分の唇を抑え、先ほどよりも大きく脈打つ心臓の音と
沸騰したように熱い体を抱きしめた
「ロストバタフライ」 byルルティア
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