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「すっかり秋ねぇ・・・・」
綺麗に色づいた葉が舞い落ちるのを横目に、あたしはカップに口をつけた
珍しくキャッツ以外の喫茶店に入ったものの
一口飲んだ瞬間、やっぱりキャッツのコーヒーのほうがよかったと後悔した
別にこの喫茶店が気になって入ったとかじゃなく
ただ、なんとなく・・・・たまには一人でゆっくりしたいなぁと思っただけ
おいしくないコーヒーに眉を寄せつつも
それでも、貴重なお金を費やしたと思えば、残すこともできず
結局は我慢して口をつける・・・・・
内心、失敗したなぁ・・・と呟きつつも
気分を少しでも変えるために再び視線を外へと向ける
ショップのディスプレイも流れてく人の服装も、木々も
すっかり、夏から秋へと姿を変えている
「・・・・・・けど、ま・・・・あのもっこりバカは相変わらずなんだけどねぇ」
ぼんやりと外を眺めていたはずが、無意識の内に浮かんだ一人の男に苦笑を漏らす
夏だろうが、秋だろうが、それこそ季節関係なくナンパにせいを出すバカ男
女にだらしなくて、変態で、仕事もしないとどうしようもないのに
なんだってこんなに気になるんだか・・・
「・・・・・・そんなのあたしが知りたいわよ」
ボソっと呟いて、最後の一口を流し込むとそのまま店を後にする
店を出た途端襲ってきた冷たい風に、わずかに身震いしつつも
まぁ、歩いていれば温かくなるかな、と考えそのまま一歩踏み出す
(でもさ・・・どうしようもないバカで変態な男だけど・・・
かれこれ両手じゃ数え切れない美女の心を射止めてるのよねぇ)
女にだらしなくて、変態で、仕事もしないとどうしようもない男
でも、それだけじゃない・・・・人を惹きつけてやまない魅力があるのもまた・・・事実
自分の知らない過去までいれたら、一体どれだけの女がアイツの毒牙にかかったのか
考えただけで頭が痛くなる・・・・
「・・・・・・まぁ、その中でも一番奇特なのが、あたしなんだろうけど」
ふと自分の姿を映し出したショーウィンドウに目が留まり、苦笑を浮かべる
押しかけパートナーになって、未だに隣に居座ってる
嫉妬なんてする権利なんてこれっぽちもないのに、
なんだかんだと理由をつけては、ハンマーを振り下して邪魔をして・・・
ショーウィンドウに映った苦笑が、徐々に自嘲的な笑みに変っていくことに気づき
あたしはあわてて、首を横に振った
「・・・・・・やっぱり、一人でぐるぐる悩むもんじゃないわね」
「そうだよなぁ、外でんな百面相してたら通報されてもおかしくねぇもんなぁ」
ろくなこと考えやしない・・・・、そう続けようとしたものの
まるで遮るように被せてきた声に、思わずぎょっとし顔をあげれば
そこにはニヤニヤと笑みを浮べてる僚の姿があった
「僚っ!あ、アンタ、いつからそこに!?」
「いつからったってなぁ・・・あぁ、おまぁが奇特とかなんとか呟いてるところ、から?」
「そ・・・・そんなときから見てっ!!!」
羞恥心で一気に頬が赤くなる
何を言ったらいいのかわからず、思わず口をパクパクさせてると
さらに僚は顔をにやつかせて、「ん~?どったの?カオリチャン?」と平然と言ってのけた
その余裕顔がさらに癪に障って
「なんでもないっ!!」と啖呵を切るようにして叫ぶと、さっさと歩きだした
「んだよー、せっかく人が注意してやったのにお礼の言葉もないわけ?」
「なにが注意だ!!むしろ面白がってみてたヤツになんでお礼なんか言わなきゃなんないのよ!!」
「酷い言いようだなぁ、オイ・・・・リョウちゃんこーんなにカオリンのこと心配してるのに~」
「ど・こ・が・だっ!!そもそも心配してるならさっさと声かければいいだけでしょうが!!」
「なにをいう!!さっさと声をかけたらそれこそ面白みが減るじゃねぇか!!」
「・・・・・・・やっぱり楽しんでやがったな」
「・・・・・あ”」
ぐるっと後ろを振り返りギっと睨みつければ、「あちゃー・・・」と言わんばかりに誤魔化し笑いを浮べてる男
そうよ、こういう男なのよ、コイツは!!!
女にだらしなくて、変態で、仕事もしないとどうしようもない男、
なのに、たくさんの美女の心を射止めては掻っ攫ってしまうタチの悪い男
かといって、美女がその気になったら、まるで今までのしつこさが嘘のように逃げ出す卑怯者
はっきり言って最低最悪よ、絶対に好きになるもんじゃないわ!!!
でも・・・・
「覚悟はできてんでしょうね・・・・僚?」
「あ・・・・あははは・・・・な、なんの、カクゴ?」
「そんなもん・・・・このハンマーに潰される覚悟に決まってンでしょうがぁあああ!!」
「ぎょぇぇえええっ!!!カオリさまご勘弁をぉおおおお!!!」
「まちやがれこのヒトデナシーーー!!!!」
この最低最悪な男のそばに居ることも
ハンマー片手にコイツを追い掛け回してる自分が・・・・実はそこまで嫌いじゃない
なんて最近思えてしまうあたしのほうが・・・・なんだかんだで、一番最悪なのかもしれない
そんなことを思ったとある秋の午後・・・・
あなたのそばで song by Crystal Kay
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