忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

幸せについて本気出して考えてみた


 

『Q,もしも、3つだけ、願いがかなうなら、あなたは何を願いますか?』

 

 

そんな言葉を目に留まった
願いごとが、3つだけ叶うなら・・・
あたしは、一体・・・何を願うんだろうか・・・

 

「まぁ、まずは経済面の安定よね
裕福じゃなくても、毎回毎回公共料金の支払に悩まない生活がいいわね
どっかのパータリがツケ溜め込んできても、借金取りから逃げ隠れない
それくらいの平々凡々な生活ができるのがベストね」

 

家計簿に赤い字を書く生活とも、オサラバ!!
あぁ、なんて素晴らしきかな、人生!!!
考えただけでも涙が出ちゃう

 

「・・・・って、これってごくふつうのことよね?願いってことでもなさそうだし
でも、今更大金持ちになってもなぁ・・・・なぁんか気後れしちゃいそうで嫌なのよねぇ」

 

本当に根っからの貧乏性よねぇと、呟きながら
自分で入れたコーヒーを飲む
美樹さんからもらったクッキーをお茶菓子にしながら
一人優雅に午後のお茶会・・・・でも、ただぼー・・・っとしてるっていうのはできなくて
なんとなく、広げた雑誌に載ってたページについて考えていた

 

「他は・・・・そうねぇ、あのもっこりバカがもうちょっと自重してくれってことかなぁ
百歩、ううん、1億歩譲ってあのナンパ癖を許したとしてもよ
せめて仕事中に依頼人に夜這いをかけるのはなんとかならないのかしらねぇ
そうねぇ・・・言うなれば公私混同の区別をハッキリさせてほしい・・・かな?
・・・それに、僚が女の人追いかけなくなったらそれはそれで心配だしね」

 

なんたってヤツは恐怖のもっこり大魔王だしね、と一人タハハと笑ってみる
・・・・ま、それにヤツが女の人に見向きをしなくなったとしても
アイツがあたしの方を見てくれるわけでもないしねぇ・・・・
って、・・・・オイオイ、槇村香サン?
一体なんつーバカなことを考えてイルノデショウカ?

 


「ははは、まったく変な妄想もほどほどにしないとねぇ」

 


わざとバカ笑いをして、大きな動作で肩をすくめると
再びカップに口をつけ・・・・

 

 

「昼間っから妄想って・・・・・カオリチャンってば、ダイターン♪」

 

「ぶっ!!!!?・・っげほっ、ごほっ・・!!!りょ・・・・りょう!!?」

 

 

突如として現れた僚に、思わず飲みかけのコーヒーが気管支に入りむせた
・・・・ったく、いつものこととはいえ、心臓に悪いったら無いわね
げほごほとまだ止まらない咳のせいでしゃべれないから、代わりにギっと睨んでも
妙ににまにま笑うし・・・・~~~っ!!コイツこういうとこが異常にむかつくわっ!!

 

 

「りょ、僚!!アンタいつからそこに!!!」

 

「いつったってなぁ・・・・カオリンが一人で優雅にティータイムし出したと思ったら
ブツブツと願い事を言い出したあたり?」

 

「さ、最初っからでしょうが!!!黙って見てんじゃないわよ!!変質者かおのれはっ!!」

 

「いやー・・・だって、おまぁってばぶつぶつ一人で呟いてて楽しかったし~?
あ、アパートの外ではやるなよ、それこそ変質者と間違えられるぞ?」

 

「~~~~~っ!!!そ、そりゃご親切にっ!!ご忠告どーーもっ!!!!」

 

「うんうん、素直なことはいいことだぞー、というわけで、俺のコーヒーよろしく♪」

 

「~~~~~~~っ!!!!!」

 

 


本当ならここで「調子に乗るな!!」とハンマーの一発でもいれてやりたかったんだけど
気配を読めなかったあたしが悪いのは百も承知だから・・・あたしはせてもと「りょーかいっ!!」と
複式呼吸で怒鳴りつけるように言うと、そのままキッチンへとドスドスと足音をたててむかった

 

 

「ったく、なにさ、僚のやつ!居るなら居るって一言言えばいいじゃないのさっ!!!」

 

 

ブツブツと文句を呟きながら、僚の分とあたしの分の2つのコーヒーを入れると
再びリビングへと向えば、そこには僚がいつものようにソファの上でくつろいでいた
ただ、見ていたのは僚の秘蔵のお宝本ではなく、先ほどまであたしが見てた雑誌だった

 


「・・・・・願いごとねぇ・・・・んなもん、間違いなく世界中のもっこりちゃんともっこり!に決まってるよなぁ?」

 

「アンタ、・・・・なんであたしにそんなことを聴くわけ?」

 

「あ?そりゃもちろん、男の中の男であるカオリくんに意見を・・・・ぐぇぇぇっ!!!」

 

 

 

わかりきっていたこととはいえ、やはり言われれば頭にくるもので
あたしは今度は容赦なく僚にハンマーを振り下ろした
ピクピクと痙攣してる僚に、フンっと鼻をならしながら雑誌を奪い返すと
そそくさと雑誌の続きを読み始めた

 

 

「・・・そんで、妄想好きのカオリンの3つ目のおねがいつーのは?」

 

 


ゆっくりと雑誌を読むあたしの邪魔をするように、僚がハンマーの下からはいあがってきた
・・・・さも、痛そうにしてるけど、ちゃぁんと受身だって取ってるし、さほどダメージ受けてないくせに
でも、それを指摘するのは「イケナイこと」だってわかってるから、あたしはあえて無視して
「もっこりのことしか頭にないアンタに言ってもしょうがないでしょうが」と突っぱねた

 

 

「つれねぇーなぁ、いいじゃねぇか別に、減るものじゃあるまいし?
あれか?なんか欲しいものがあるとかか?」


「まさか、そんなちっぽけなことに大切な願いを使うわけないでしょ?」


「・・・・・ちっぽけねぇ・・・・・それじゃぁ、そこまで言うカオリンの願いってなんなわけ?」


「・・・・珍しいわね、アンタがそこまであたしの意見を聞きたがるなんて?」

 

 


なんか裏があるんじゃないでしょうね?と睨めば
僚はいつもの狸顔(ポーカーフェイスなんてかっこよく言ってやんない)で
「べつにー?暇つぶしぐらいにはなるだろ?」とグラビア雑誌片手に言って来た

 


「・・・・そもそも、この3つの願いつーのも暇つぶしなんだろ?だったら別に言ってもかまわねぇんじゃねぇの?」


「そりゃそうだけど・・・・・でも、だからってアンタに言うものでもないでしょ」

 


そう言うとあたしは、この話題は終りとばかりに入れなおしたコーヒーを味わう
あー・・・やっぱり美樹さんのところでわけてもらった豆なだけあるわね
特売の豆とは比べ物にならないぐらいおいしいわぁ~

 

あたしがしみじみとコーヒーの味を味わっていると
僚も僚で、興味を失ったのか、再びグラビア雑誌へと目を向ける
しばらくはぺら・・・・ぺら・・・・と紙をめくる音
そして、時折漏れる僚の「ぐふふふ」というバカ笑いが響いていたけど
ふと、時間を確認し、あたしは席をたった

 

そろそろスーパーのタイムサービスが始まるのよねぇ
卵1パック80円は見逃せないわ
ほんっと節約って大事よねぇ・・・・・なのにこの男ときたら・・・・・

 

 

未だに「ぐふふふ」と笑い転げている男が憎たらしくおもいつつも
あたしは「ねぇ、僚・・・・・」と声をかけてみせた

 

 


「あー・・・・・・?んだよ、買い物なら付き合わんぞ」

 

「なによ、まだなぁんも言ってないでしょうが・・・・それに、今日はそんなに買い物しないから大丈夫よ
そうじゃなくてさ・・・・・・・結局人間って、願うものって案外シンプルなのかもねぇ、って言いたかっただけ」

 

 

 

声をかけた途端に断りを入れてくる男に、ムッとしつつも
あたしはなんとか辛抱して言葉を続けた
すると、案の定僚は「はぁ?」という表情をしながら、雑誌から顔をあげ、あたしの方を見てきた

 

 

 

「んだぁ?唐突に・・・・・って、あぁ、さっきのヤツか?なに?おまぁ、もしかして永遠の命とか、若さとか願うわけ?」

 

「んー・・・・・そうじゃないけど、近いといえば近いわね」

 

「・・・・・・あん?どういうことだ?」

 

「べっつにー・・・・じゃぁ、あたしは買い物いってくるわねぇー」

 

「って、オイこら!!カオリっ!!!」

 

 

 

 

本格的にはてなマークを浮かべ始めた男に、あたしは先ほどの仕返しのようににんまり笑みを浮べると
そのままくるっと反転して、リビングを後にした
もちろん、後ろから僚の声が聞こえたけど、無視無視!!
ふふふ!せいぜい頭を悩ませればいいのよ
ま、絶対に答えなんて言ったりしてやんないんだけどねぇ

 

 

 


もしも願いが叶うなら

 

 

普通の経済状況と

 

 


パートナーの女癖の悪さを、依頼中だけでも治してほしい

 

 


そして

 

 

 

「あたしと、僚が・・・・・普通の人並みたいに長生きできますように」

 

 

 


どちらかが早死にすることなく
長く健やかに、生きていけますように

 


死に方は・・・できれば老衰がいいけど
でも、そこは・・・まぁ、運命だし
もちろん、天寿ってのも運命なんだろうけど・・・でも、そこはわがままになってもいいわよね
なんたって願い事だし、なんでも叶えてもらえるなら、少しぐらいのわがまま聞いてくれても
バチは当んないわよね

 


一緒にいられなくてもいい
愛されなくたっていい

 


それはきっと、心の問題で、願い事で無理矢理どうにかするものじゃないもんね

 

 

「けど、たぶん・・・・・あたしたちからしたら、ものすごい願い事よねぇ」

 

 


裏世界に住む住人からしてみえば、きっとものすごい高望みだわと
くすくす笑いながら、あたしは今も切迫してる家系状況を思い出しながら
少し歩く速度を速めて、1パック80円の卵を目指し、スーパーへと向った

 

 


fin

 

 

「幸せについて本気だして考えてみた」 song by ポルノグラフィティ
 

PR

Copyright © Short Short Story : All rights reserved

「Short Short Story」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]