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朝は、いつも香が用意した飯を食って、コーヒーを飲む
起きなければ香お得意のハンマーで起こされ
起きたら起きたで「珍しいこと」と笑って目覚めの一杯を渡される
どっちにしろ、一番最初に見るのは香の顔で
一番最初に聞く声も、香の声
朝のもっこりお天気キャスターも
テレビの女子アナも
たぶん、この声には敵わないんだろうなぁとなんとなく思いながら
俺は今朝の新聞を読みながら、香の淹れたコーヒーを口にする
そんな俺を尻目に香は家事にいそしむ
洗濯、洗物、掃除
それが終われば伝言板のチェック、で、休憩がてらキャッツ
いつものお決まりパターン、日常のサイクル・・・・・だが
「なぁ、香」
「なによ?」
名前を呼べば、足を止めてこちらを見る香になんと従順なのかと内心苦笑しながら
軽く手招きすれば、「あたしは犬かっ!!」と噛み付きながらも大人しく来るもんだから
つい、笑みが漏れちまった
「・・・・・何笑ってんのよ?」
「いんや、犬じゃねぇつってる割には随分と犬っぽいなぁっと」
「アンタ、あたしを馬鹿にしたいためだけに呼びつけたわけ?」
困惑顔から一気に不機嫌顔になり
それこそハンマーでもすぐさま取り出しそうな雰囲気に俺は慌てて首を横に振り
「んなつもりじゃねぇって!!」と弁明する
「じゃぁ、なによ?あたしはまだ仕事がっ!!」
「へいへいわぁーってるって・・・・でもよ、それって今日絶対にしないとまずいもん?」
「・・・・・・・どういう意味?」
不機嫌顔から再び困惑・・・というよりは、意味がわからんという顔を首をかしげる女に
俺はつい、口元に笑みを漏らし、香の細い腕を掴むと俺の座っているソファへと引き寄せた
「たまにはリョウちゃんとデートでもシマセンカ?ってお誘い?」
「・・・・・語尾にはてなマークつけるんじゃないわよ、似合わなすぎて気色悪い」
俺の誘を素っ気無く突っぱねる香
だが、言葉の割りには香は俺から離れることも
強引に引き寄せたことへの文句も、逃げだそうと暴れることもせず
ただ、黙って俺の腕の中に納まっている
しかも、赤みのかかった髪の間から見える耳はうっすらと赤く染まっている
・・・・・そんな女の様子に、俺はさらに口角をあげたのはある意味仕方のないことだろう
ていうか、不可抗力だな、うん
想いを通じ合わせ、一線を越えれば今までの関係ではいられなくなる・・・と思ったんだが
香は香のままで、俺も俺のまま・・・だったりする
ただ目に見える形での変化というものはないものの
俺は若干ではあるが・・・香への気持ちが素直になった気がする
「好き」だの「愛してる」だのという甘ったるい台詞なんぞ絶対に口にはできないが
たまになら、こうして人目の無いアパートの中で、香を抱き寄せたりすることは、ある(あくまでたまにだが)
そんな俺の今までに無い態度に香はどう対応していいのかわからないらしく
結果、こういう可愛げのない態度を取っているらしいのだが・・・・
(言ってる言葉と態度が逆じゃ、意味ねぇよなぁ)
可愛げなないどころじゃない
むしろ構い倒したくなる可愛さだろっと内心つぶやきつつも、それを本人には決して言わない
言えばこの可愛い態度が見れなくなる危険性があるのはもちろんだが
そもそも、俺がコイツに「可愛い」などと言えるはずがねぇんだよなぁ
「可愛くねぇなぁ、せっかくデートに誘ってやってんのに」
「上から目線でデートに誘うな馬鹿!・・・いいからとっとと離せっ!!!」
俺の「可愛くない」発言にカチンッときたのか、香は突如暴れだせば
俺はあっさりと香を手放す・・・・が
「なら、デートは無し?」
「・・・・・・・・・・・洗濯物ぐらい、干させてよね、もう洗っちゃったんだか」
そう言ってバタバタと飛び出す香に、俺は今度こそクツクツと喉を鳴らし笑みを浮べる
本当に、なんだってあぁも可愛い態度が取れるのかねぇ
しかもあれ無自覚だろ?天然だ天然だとは思ってたが・・・まさかあそこまでとはねぇ・・・
「顔だけじゃなくて全身真っ赤になってりゃ、世話ないよなぁ」
ソファに横になり窓の外を見れば、春らしい陽気
そろそろいつものメンツが花見だなんだと騒ぎ出すだろうが
今年ぐらいは、ゆっくりと2人で散歩がてら見るのもいいかもしれない・・・・なんて
とんでもなくらしくないことを考え付くほど、自分が香に惚れてる事実に今度は苦笑をもらし
ゆっくりと立ち上がり、出かける準備を始めたのだった
デートと言っても出かけるのは近くの公園
手を繋ぐわけでも、腕を組むわけでもない
ただ、2人で公園を歩き、伝言板を見に行く・・・それだけ
今時どこのお子様がやるんだというような
デートとも呼べないデート
だが
「・・・・・・だらしねぇ顔だなぁ、オイ」
クローゼットの姿見に映った自分の顔が、わずかに崩れていて
思いのほか、この「お子様デート」を楽しみにしている自分に再び苦笑し、部屋を出た
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ちょっとだけ冴羽氏が素直で、些細なことで幸せ感じちゃってる話
香はパニックの末、ツンデレ発動。けど、内心キャーキャーいいながら喜んでます←
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