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ゆっくりと口から息を吐き出す
ふぅーっと言う音ともに出来上がるまぁるい泡
それは、ストローを離れ、ふわふわと空へと舞っていく
大きいもの、小さいもの
繋がっているもの、一つのもの
青く、けれど、少し霞がかかった空へと昇っていく
なんてことはない、ただのシャボン玉
たまたま買い物していたときに目について
なんとなく買ってしまった・・・
家にある洗剤やストローでだってできるけど
どうしてか、買ったものでやってみたかった
ふわふわと揺れ動き・・・そして消えていくシャボン玉
消えて無くなったらまた、ふっと吹いて作り出す
何度も何度も、たくさんのシャボン玉を作って・・・
そして、ゆっくりと手を伸ばす
「・・・・ぁ」
一瞬、わずかに指が触れた瞬間にシャボン玉は音も無く消え去る
まるで夢だったかのように、一瞬で消えてしまった
触れて消えたシャボン玉
そして、消し去った自分の指
なんとなくマジマジと自分の指を見ていると、急に辺りが暗くなった
「なぁにサボってんの?カオリちゃん?」
「・・・・サボってませんっ、ただの休憩よ」
「ほぉ、そうやってガキみたいな遊びしてるのが、ねぇ?」
屋上のコンクリートの上に座っているあたしを、僚は呆れた顔で見下ろした後
自分はフェンスへと背を預けてあたしが飛ばしたシャボン玉を見上げた
「んで?なんでシャボン玉なんてやってるわけ?」
「・・・・なんとなく、スーパーで目に付いたから」
「ふーん・・・・節約家のおまぁにしては珍しいのな」
「お・か・げ・さ・ま・でっ!!誰かさんのおかげで節約の腕はメキメキと上がってますけどっ!!!
・・・でも、ずっとってわけじゃないでしょうが」
あたしがそんじょそこらの主婦よりも節約家になった原因は誰のせいだ、誰の!!
という思いで横目で僚を睨みつつ
あたしは再びシャボン玉を作る作業に集中する
ゆっくりと大きなものを作るのではなく
ふーーーっと勢いよく小さな群れを大量につくる
小さなシャボン玉たちは勢いよく上へ上へと昇っていく
陽の光を浴びてキラキラ輝くシャボン玉
それを黙って見上げるあたしと・・・僚
言葉も無く
いい大人が2人も、ただ黙ってシャボン玉を見つめ続けるというのは
ある意味とても奇妙な光景なのかもしれない
そう考えるとちょっと恥ずかしくて、あたしはシャボン玉から手元のストローへと視線を移した
「昔ね・・・・シャボン玉が苦手だったの・・・ほら、シャボン玉ってさすぐに消えちゃうでしょ?
すごく綺麗でも、どんなに頑張って大きく作っても・・・・すぐに消えちゃうの
それが嫌で、躍起になって割れないようにしたりしてさ
・・・・・けど、やっぱり割れちゃって・・・・なんかさ、どうしようもなく空しくなって、いつの間にか止めちゃった」
もう一度、ストローに液体をつける
今度はゆっくりゆっくり、慎重に・・・・そして、最後にふっと息を吹きかけ・・・大きなシャボン玉を飛ばす
「けど、今日はなんだか目に着いちゃって・・・・こうして飛ばしてるの」
大きなしゃぼんだまは、小さいものに比べてゆっくりゆっくり空へと昇っていく
ゆっくりゆっくり・・・・・そして・・・・・
「なるほど・・・・確かに見た目どおり、あっさりと壊れるもんだな」
先ほどあしたがしたように、僚が自分の指でシャボン玉を壊した
「ちょっと、邪魔しないでよ!!」
「いいだろうが、一個くらいケチケチすんなって」
ムッとして文句を言えば、悪戯が成功した子供みたいな顔で
それこそ、どこかの悪がきのような台詞を言ってきた
それがまたなんとも小憎たらしくて、あたしは乱暴にストローを液体につけると
そのままフーーーッっと勢いよく僚へとシャボン玉を発射させた
「ちょっ!!!な、なにすんだよ!!てめぇはっ!!!!?」
「ふふふん、あたしのシャボン玉を壊した罰ですよーだ・・・少しシャボン玉でアンタも戯れてば?」
「ばーか、俺が戯れるのはもっこりちゃんとって決まってんだよ!!」
「そのもっこりちゃんに毎回フラれてるヤツが何言ってんだか・・・・」
今度はあたしが呆れた顔をすると、僚から顔を背けて再びシャボン玉を作る
残り少ない液体から、そろそろ終わりだなぁなんて考えていると
憮然とした顔をした僚によってストローと液体が取り上げられた
「・・・・邪魔しないでって言ったでしょ?」
「お前こそ、ケチケチすんなって言ってるだろうが・・・・俺にも1個くらい作らせろよ。
でっけぇやつ作ってやるから」
「・・・・・・僚が?シャボン玉?・・・・作るの?むしろ作れるの?」
「おまぁ・・・・よっっっぽど俺を馬鹿にしたいようだな?よかろう!!リョウちゃん本気出しちゃうもんね!!!」
「シャボン玉つくりに本気も何も無いでしょうが・・・・ま、お手並み拝見してあげましょう?」
ムキになってる僚と、余裕の表情のあたし
実はシャボン玉って結構大きくつくるの難しいのよねぇ
あの、なんとも微妙な力加減が・・・・あたしだって、ようやく勘を取り戻して多きく作れるようになったんだから
いくら僚だってそう簡単に・・・・・
「・・・・・ま、こんなもんだな?」
「・・・・・・・・・アンタが妙なところでど器用だってこと忘れてたわ」
「ふふふん、テクニシャンのリョウちゃんにはこれくらい朝飯前なの」
「ぬわぁにがテクニシャンだ!何が!!!」
自慢顔の僚にあたしちょっと悔しかったのもあり噛み付く
だって、僚が創り上げたのは、あたしのよりも一回りも二回りも大きいシャボン玉だったのだ
結構苦戦して作ってたのに、こうもあっさり作られると・・・たかがシャボン玉でもムカつくものはムカつくのよ
けど、リョウの作った巨大シャボン玉はあたしの予測と違い空へと飛び立たず
ふよふよと重そうに漂っていたかと思うと、そのままゆっくり地面に着地し、これまた一瞬で消え去ってしまった
「・・・・でかく作りすぎたな」
「空で消えるとの、地面で消えるのだったら後者のほうが結構シュールだったりするわよねぇ、勉強になったわ
・・・・って、こらっ!!!!」
「へっ、油断大敵だよカオリ君!!ほれほれ、もいっちょ行くぞーーー!」
わざと嫌味に言えば、僚もムッとした顔をし
さっきあたしがしたみたいに、シャボン玉をアタシにむけて発射してきた
しかも、さらにやろうとしてくるし!!
あぁもう!!!本当に図体だけデカイ子どもみたいなヤツなんだから!!!
「やめんかっ!!!もったいない!!!・・・・って、あぁぁ!!もう全部なくなってるじゃないっ!?」
最後に僚が乱発したせいで、残り僅かだった液体は空っぽになっていた
あーもう、最後にもう一回チャレンジしたかったのに・・・・
「いいじゃねぇか、また買ってくればいいだけの話だろうが」
「そりゃそうだけど・・・・」
「・・・・それに、苦手なんじゃねぇのかよ、シャボン玉」
ムスっとしたあたしに、僚は視線をそらしながら聞いてきた
・・・・たぶん、この男のことだから本音はコッチね
だからわざとあんなことして・・・・本当に素直じゃないんだから・・・・
「苦手『だった』の、あくまで過去形・・・・・今は、そうね・・・・結構好きかも」
「ふーん、そんなもんかねぇ?ま、おまぁは単純だからどーせたいした理由じゃねんだろうけど?」
「そうよ、たいした理由じゃないわ・・・・なんたって、アンタが傍にいる。ただそれだけの理由だしね」
「・・・・・・・・は?」
あたしの答えが意外だったのか、ぽかー・・・んとした顔をする僚にあたしは
ケラケラ笑って見せた
苦手だった
一瞬で消えてしまう儚さが
高く高く飛んで、消えてしまう姿が
手が触れた瞬間儚くなくなってしまう存在が
まるで、求めちゃいけないような気がして
見てることしかできない自分みたいで・・・
「ねぇ、僚・・・・あたしのこと、好き?」
「・・・・・・・・それは、お誘いかなカオリちゃん?」
ケラケラ笑うあたしにブスっとしてたくせに
にやぁ~っといやらしい笑い顔になった男に、スッコーンと1tハンマーを頭上に落とした
「そ、そんなわけないでしょうが、バカタレ!!」
「ぐぇっ!!・・・ぃてて、おまぁこそ不意打ちは卑怯だろうが!!」
「それはこの手に対しても言ってもらいたいものねぇ?」
僚があたしに腕を伸ばしてきた手のひらをぎゅっとつまみあげた
まったく、なんだってこうも手が早いんだか・・・・
あたしはパッと僚の手を放すと、そのまま僚に背を向けて屋上を後にしようとした・・・
けど、ドアノブに手をかけ、半分体を中へと入れた状態で、あたしは少しだけ動きを止めた
「あたしは・・・・嫌いじゃない、わよ?」
そうポツリと呟くとそのままバンッと扉を閉めて階段を駆け下りた
欲しいものを欲しいといえなかった
居て欲しいときに居て欲しいと言えなかった
わがままを言っても、絶対に無理だと
相手に辛いを思いをさせてしまうものは、無意識の内に言葉にしなくなっていた
アニキに対しても・・・そして、僚に対しても
特に僚に対しては、「好き」なんて絶対にいえないと思ってた
告げたら終わりだと、「今」が壊れてしまう禁断の言葉だとすら思ってた
・・・・けど・・・・
「おまぁ、もうちっと素直な言葉で言ってもいいんでないの?」
あっという間に追いつかれ、腕を取られ動きを封じられた
わかってたけどさ、この男から本気で逃げることなんてできやしないって
しかも、自分の聞きたい言葉とか、そういうのはなんだかんだで無理矢理言わさせるのが得意だし
・・・・・本当に、根性悪いヤツなのよ、この男は・・・・
「だったら、僚から言えばいいじゃない!!」
「おまぁが言ったら考える」
「考えるって・・・・どうせ言わないくせに!卑怯もんっ!!!」
「んだよ、最初っから否定すんなって・・・・まっリョウちゃん言葉より態度で表現するのが得意だし~♪なんなら、今から実践してみる?」
「・・・ツツシンデゴエンリョシマス」
こういう冗談が言える関係になって
もう、自分の気持ちを隠す必要が無くなって
それで、たまたま目に付いたシャボン玉を買ってみた・・・・
「それじゃ、カオリン、もうちっと素直にさっきの台詞を言ってみようか?」
「わかったわよ・・・・・じゃぁ、いくわよ?・・・・・・・・・こんの・・・どSっ、サディストっ、根性悪のもっこり大将の変態ばかぁああああ!!」
しょうがないという顔でわざと顔を近づけた後、耳元でおもいっきり叫んでやった
よっぽど痛かったのか、それともキーーーンとするほど耳鳴りがしてるのか、僚が顔をしかめてる
・・・・その一瞬の隙をついてあたしは僚の拘束から逃れ・・・そして
「・・・・・・でも、僚が・・・いい、な」
抱きついて、ポツリと言ってみた
こうして言葉にしたり、抱きついたりするのは・・・・
たまらなく恥ずかしいけど・・・・でも、ちょっと嬉しい・・・・
言葉にしても、抱きついても、『消えない』・・・・その事実が嬉しい
「・・・・・素直じゃねぇの」
「うっさい、黙れもっこり色魔」
恥ずかしさと嬉しさから赤くなった顔を、僚の胸に押し当て・・・・あたしはちょっとだけ、笑った
「好きだなんていえない」 song by Fayray
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