忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

もう一度キスしたかった




「いなくならないで」

そう言って女が泣く
いつも気丈な女が泣く・・・いや、気丈なフリをした弱い女だ
明るい表情の下に、弱い部分を隠した女
一人を恐れ、孤独を恐れ、闇を恐れ、それでも俺の傍に居続ける女
笑って俺を見送りながら、その目だけが必死に引き止めていたのを知っていた

「どこにも、いかないで」

そして、女は今日ついにソレを吐き出した
滅多に飲まない量の酒を飲んで
縋りつくような視線を向けながらも
一歩たりとも俺へと近づかない女

「ひとりにしないで」

真っ直ぐな視線、そして、その目はとても澄んでいて
俺はできればすぐにでもその目から視線をそらしたかった

ここで突き放せば、女は俺から離れるだろうか
俺とは違う世界に戻っていくだろうか
長年続けていたこの異常な日常を壊すチャンスなのではないか?
そうささやくもう一人の俺の声からも、目をそらす

手放すことは、もうできないはずなのに
表のまっとうな世界に戻したいとも思う
「お前が、堕ちてくれば・・・どこにも行かねぇよ」
決定権を、俺に託すなと言わんばかりに吐き捨てる

いなくなるなと言うなら傍にいろ
行くなと言うなら、その手を伸ばせばいい
一人にするなと言うなら、縋りつけ


「お前が決めろ、香」


俺はもう決められないから、どちらも選ぶことはできないから
だから、お前が決めろ


「覚悟は・・・・お前が決めるんだ」


顎を持ち上げ、真っ直ぐに恐れを知らぬ目を覗き込む
その視線が迷いが混じればいいと思いながらも
まっすぐなままなことにホッとしている俺には、もう何も選ぶことなどできないから


「お前の選びとった覚悟に、俺も付き合ってやる」


離れたいなら、徹底的に突き放して二度とコチラへこれないようにしてやる
離れたくないなら、どこまでだって連れて行く、そこが例え地獄の底まで連れてってやる


そう言い切れば、女は目を見張り
どこまでも嬉しそうな微笑を浮かべながら、決断の言葉を口にし
俺は嬉しさもも困惑も、怒りも、悲しみも、全てがが混ざった感情のまま
香の唇にキスをした・・・・




「もう一度キスしたかった」 by B'z

PR

Copyright © Short Short Story : All rights reserved

「Short Short Story」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]