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酒を飲んで、女抱いて、誰にも縛られず好き勝手に生きて
これはこれで幸せなんじゃねぇのとまで思っていた
世間一般の幸せなんてもんより、コッチのほうが性にあってると内心笑っていた
女を抱くのは気持ちよくなるため
温もりに癒され、柔らかさに酔い、一時の孤独を埋める
酒に溺れるフリをするのは、道化の仮面を被るため
孤独を忘れ、何もかも知らぬフリをするため
誤魔化して生きていることこそ、俺には合っているのだと思っていた
この女に会うまでは
俺が誤魔化そうとすると怒り、ハンマーで叩き潰す。そして呆れてながら許してくれた
なのに、必死になって俺を追ってきては、俺の中の『真実』を見つけようとする
許していながらも、許さない女
必死になって俺の後を追ってきた女は、いつの間にか俺の隣にいて笑っていて
躊躇しながらも手を伸ばし、その身体を抱いてしまえば、今まで感じていた『幸せ』が一瞬にして色あせた
温もりに癒される、柔らかさに酔いしれる、孤独を埋める
それは変わらないのに
いつまでもこの温もりを離したくないと望んだ
どこまでも酔い続けたいと願った
一方的に孤独を埋めるのではなく、互いの孤独を埋めたいと渇望した
一時(いっとき)の夢などにはしたくないほど、目の前の女に溺れた
「・・・・Femme fatale、ってヤツだな」
「なに、それ?」
ポツリと呟いた独り言、聞かせるつもりなど無かったのに
眠っていると思った女の耳に届いたことにわずかに苦笑する
「起きたのか?」
「ん・・・・ねぇ、さっきの、なに?」
誤魔化すように髪を撫でれば、猫のように気持ち良さそうな顔をしながら
香は俺に答えをせがむ
掠れた声と細めた目が俺の中の情欲を再び掻き立てるが
先ほども随分と無茶をさせたために、無節操な己を香にバレぬよう抑える
「さぁ、なんだろうな?」
「・・・誤魔化すってことは、変な意味ってことよね?」
抱きしめ、口付け、必死に誤魔化そうとする俺をさっさと見破り
ぎゅっと頬を抓る香に、わざと「いてぇんだけど」と文句を言えば
「嘘つき、痛くなんて無いくせに」とそっけなく返された
・・・まったく、どこまでも俺の『嘘』を見抜くスキルを上げれば気が済むんだおまぁは?
「わかってんなら誤魔化されろ、それも優しさの内だぞ、カオリちゃん」
「あ、そう・・・それじゃぁ毎日のように誤魔化されてるあたしは優しいって認めるようなもんよね?」
にっこり笑う笑顔は天使、だが、その後ろに黒い尖った尻尾がチラチラ見えるのは気のせいか?
・・・・まぁ、そうさせてるのは紛れも無く俺なんだよなぁ
「あー・・・ソウデスネ、香さまはお優しいですよー、っと」
「ふふ、そうでしょ?・・・・ふぎゃっ、ちょ、重いっ!!僚っ重いってばっ!!」
「リョウちゃんもっこりし過ぎて眠いのー、つーわけで、さっさと寝るぞ」
「疲れてるのはあたしも一緒・・・って、な、ど、どこ触ってっ!!」
「そんだけ騒いでるってことはまだまだ元気だって証拠だろぉ?ならもっと疲れさせて無理矢理寝かせてあげようかなぁって、やっさしーリョウちゃんは考えてるんだけど、どぉよ?」
「ばっ!!む、無理っ!!これ以上は無理っ!!死んじゃうからっ!!本気で死んじゃうっ!!」
イヤイヤとジタバタ暴れる香に、思わず口角があがりそうになる
こんな風に女とベッドの上で戯れるなど、かつての俺が見たらさぞ驚くことだろう
いや、そもそも、同じ女を何度も何度も抱いてるってだけで異常な目をするかもなぁ
しかも毎晩だぞ?ぜってぇ、「ありえん」って顔するだろうなぁ
過去の自分の姿がありありと想像でき、思わずクッと笑みをこぼせば
香が不審そうな顔で俺を見上げてきた
「・・・リョウ?」
「いんや、なんでもねぇ・・・ただ、おまぁはすごいって思っただけ」
「・・・・・なにそれ・・って、やっ・・・ぁんっ!な、なにすんのよっ!」
「だぁって香ちゃんがしつこいからぁ、寝てた子が起きちまったの・・・つーわけで責任取ってくれるよな?」
「な、なにっ、そ・・・れ・・・・ふぁっ」
先ほどまでは自重しようとした情欲を、今度は誤魔化す手段として用いる俺は
実は過去とさほど変わっていないのかもしれない
だが、自分勝手に生きていた俺が、盲目的なまでに一人の女に溺れている
それは、覆しようの無い事実であり、現実
Femme fatale・・・それは運命の女であり、男を破滅へと導く女神の呼び名
俺の人生をいい意味でも悪い意味でも狂わせた女に
今夜も俺は、全てを投げ捨て溺れていく
「Love Phantom」 by B'z
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