[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
*この作品はパラレルです
ファンタジーです。設定もちょっと曖昧です
それでも良いという方は、続きよりお読みください
いつか
きっと、出会うから
いつか
きっと、会えるから
それまで・・・・ほんの、ちょっとだけ・・・・
----- ひらり
それは、果たして偶然だったのか
・・・・・それとも・・・・・・・
「あ・・・・・」
戸棚を整理していたときに舞い落ちた一枚の写真
なんの変哲も無いそれを、拾い上げる
綺麗な青空の写った、一枚のポラロイド写真
誰が撮ったのかわからず、首をかしげる
写真は全てアニキがアルバムにしてくれているはずで
しかも、風景の写真なんて・・・・
いくら首をかしげてもわからなくて
でも、放っておくこともできなくて
あたしは簡単な書置きをすると、家を出た
スニーカーを履いて
写真片手にきょろきょろと近所を探す
たぶん、これはそう遠くない景色
あたしの知ってる景色
自分の通いなれた道を辿りながら、あたしは写真と風景を見比べていく
このとき、あたしは探していた
たしかに、探していた
・・・・けど、もしかしたら・・・・・
「あ、ここ・・・・」
古びた小さな公園
休日の昼間だというのに人影の無い公園はたしかに来た覚えがある
公園の真ん中へと移動して写真をかざせば、季節感は違うものの
たしかに同じ風景があって、あたしはようやく満足することができた
・・・・・・さっさと帰らなければ
この時、ほんの少しだけ過ぎった意識
けれどそれは、突如ザァー・・・・ッと強く吹いた風によって霧散し、消え去る
(・・・・な、に?)
写真の場所を見つければ納まると思っていた胸騒ぎがより一層大きくなる
ざわざわと騒ぐ何かを振り払うように、あたしは頭を振り・・・・そして・・・・
「おせぇぞ・・・・ったく、待たせやがって」
「へ?」
公園の隅にあった、忘れ去られたジャングルジム
そのてっぺんで平然と立っている男の人を
今まで確かにここにはあたしだけだったのに・・・・
いつの間に男がジャングルジムに上ったのか
それとも最初からいたのか・・・・
「なぁにマヌケ面してんだよ、おまぁは・・・」
「ま、マヌケっ!!?」
初対面でいきなり何を言ってやがるんだコイツは!!?っと
思わず怒鳴ろうとしたそのとき、再び風が吹いて・・・そして・・・・
「マヌケをマヌケっつって何がわりぃってんだよ・・・しかも、久しぶりの再会だってのに
もうちょっと喜んでもいいんでないの?」
「な、なにわけの分からないこと・・・い・・・って・・・・」
意味のわからない言葉を並べる男に文句を言おうとするも
あたしが口を開くよりも早く
男は結構な高さのあるジャングルジムから・・・・
飛んだ・・・・
重力に従うように、ドンッと・・・ではなく
今吹いている風のように、ゆっくりと、羽織っていたジャケットをたなびかせ
まるで映画のワンシーンのようにふんわりと・・・・
それは、どこか現実味がなくて
あたしは思わず着地した男をまじまじと見つめる
黒い髪
黒い瞳
太い眉に、普通の人よりもはるかに逞しい体つき
まったく知らない男の人
なのに・・・・そのはずなのに
今、あたしの脳内では、様々な場面がフラッシュバックしていた
飛んでいく風船
綺麗な青空
そして
・・・・見知らぬ風景
その風景の中に居る男と・・・・
「はぁ・・・・なんでおまぁは毎回泣くんだよ・・・」
「・・・・ぇ・・・・・ぇ?」
男の呆れたような声に、ハッとなり自分の頬を押さえれば
手になにかの水滴が付着していた
バカみたいにそれをマジマジと見つめ
あたしはようやく・・・・自分が泣いていることに気づいた
「な・・・んで・・・・・」
初めてあった人なのに
初めて出会う人なのに・・・知らない人なのに・・・
--------胸が、苦しい
これをなんと呼ぶのか、あたしは知らない
今まで感じたことの無い感情が暴れまくる
なにを、どうしたらいいのかわからなくて
あたしは、ぎゅっと自分の体を抱き寄せる
「・・・・・混乱してんのか、まぁ・・・そりゃそうか、なんせ時間が空きすぎてるからなぁ」
苦笑と共に降りてきたのは・・・・大きな手
決して優しくは無い
でも、強くもない
一見乱暴にも見える手つきに、再び既視感を覚え
見上げたさきにあったのは・・・・・
「迎えにきたぞ・・・・カオリ」
あたしは・・・・・このとき、この顔を見てはいけなかったのかもしれない
目を細め、自信に満ちながらも、優しさを宿したその瞳を、笑みを
だって、見てしまえば・・・あたしはもう、後戻りなんてできなかったから
何も写っていなかった
ただの風景しか写っていなかったポラロイド写真の中に・・・・
あたしを見下ろし、撫でてくれた・・・・男の、『リョウ』の姿が浮かびあがる
「・・・・・リョウ」
心の内に浮かんだ名前を呼べば、男が嬉しそうに笑うから
あぁ、もう・・・あたしは・・・戻れないのだと悟った
戻ることなど考えられない
何よりも大切だと思えるものさえ放棄してしまうくらい・・・・
あたしは・・・この男を求めずには、いられない・・・・
「カオリ・・・・約束・・・・守ってもらうぞ」
(・・・・・そう、あたし・・・・約束した、リョウと・・・・約束したんだ)
いつか
きっと、出会うから
いつか
きっと、会えるから
それまで・・・・ほんの、ちょっとだけ・・・・『サヨナラ』、しよ?
薄れゆく意識の中で、悲痛な悲鳴を聞いた
今まで聴いたことの無いくらい叫ぶ男は、次第に絶望に色を染まっていった・・・・
(やめて・・・・そんなこと、しないで・・・・っ)
届かない声で必死に願っても、男にその声は届かずに
ついに男は禁忌の術に手をつけ・・・・『人』ではなくなってしまった
『・・・・カオリ』
絶望に染まり、厳しさの中にも、優しさを保っていた彼を歪ませてしまった
その事実に絶望しながらも、一心に自分を求めてくれたことが嬉しくて
あたしは、あのとき・・・・リョウの手を取る代わりに、誓いの言葉を口にし
・・・・・・そして、『契約』を交わした
『次に、再び巡り会ったとき
そのときは・・・・・ずっと一緒にいるから・・・・もう、二度と・・・・離れない
永遠に、一緒にいるから・・・・だから・・・・・』
「 今、契約は成された・・・・カオリ、お前はもう・・・俺のモンだ 」
その言葉と共に触れてくる指はとても冷たくて、口にした声音も淡々としたものだったけれど
でも、その瞳だけが、暗い瞳だけは、その中に歓喜の色を煌かせていたから
だから、あたしは・・・・何も言わず、ただ、なされるがままに・・・・瞳を閉じた
周囲を青白い光が埋めつくす
わけのわからない文字が飛び交う
リョウの唱えている言葉も聞き取ることができない
その中で、
触れてきた冷たい唇だけが、これが現実なのだと教えてくれていた
(・・・・ごめん、ごめんね・・・・アニキ・・・・・・)
もうあたしは、人ではないこの男に、この先ずっと、未来永劫捕らわれ続ける
「人」としての寿命が終わろうと、きっと逃がしてはもらえない
そんな予感さえしていたのに・・・・
あたしの胸の中にあったのは・・・・・・絶望でも、大切な人を残していく罪悪感でもなく
どうしようもない喜びだけだった
「アイルキスユー」 song by 石川智晶
≪ 水槽の中のテトラ | | HOME | | Life ≫ |