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シャッタースピード



パラレルです


槇ちゃん生存&女子高生カオリン


苦手な方はまわれ右でお願いします







 


ピローン♪


突如鳴った電子音に香は首をかしげる
きょとんとした顔はとても幼くて、思わず「ぶっ」と吹き出せば
みるみると般若の形相へと変化し「なにしてんだっ!!」と
これまた女らしくない口調で怒鳴りつけてきた


「なにしてるたってなぁ、ちょいと新しい携帯カメラの機能性を試してたところ」


「な、なんだってそんなのにあたしを使うんだよ!!消せ!!今すぐ消せっ!!」


「へいへい、別にすぐ消すんだからちょっとぐらいいいだろうに」


「なんか言った?」

 

ギロリと睨みつつ、ブンっと目の前につきつけられた見慣れたハンマーに
僚はたらりと冷や汗を流して「なんでもありましぇーん」と降参の言葉を口にした


 

「まったく、人が貴重な休みを利用して掃除しにきてやったつーのに、アンタってヤツは・・・っ!!」


「おーおー、ご苦労さん・・・ついでに、そこの戸棚の整理もたのまぁー」


「~~~~っ!!調子にのるのもいい加減に・・・っ!!!」


「んで、それが終わったら送っててやる・・・感謝しろよ?」



くしゃりと香の頭をつかむように乱暴に撫でる大きな手に
香は一瞬呆気にとらわれるものの
すぐに「ガキ扱いすんなっ!!」と噛みついた


 

「そ、それにっ、別にアンタに送ってもらわなくても・・・っ!」


「おんや~?外の天気わりぃなぁ、こりゃいつ降り出してもおかしくねぇなぁ
・・・なぁ、カオリちゃん?」


 

クイっと指で示されたほうを見れば、確かに今にも降り出しそうな空模様
天気予報では降るのは真夜中と言っていたため、香の手荷物の中には傘はない
・・・となれば、香に残された選択肢は・・・・




「・・・・か・・・傘、かして・・・くだ・・・さい」

「断る、おまぁに貸しちまったら俺の傘がなくなんだよ」

「あ、明日には返すから!!!」

「明日は一日中雨だっつー話なんだよなぁ、おまぁ、明日学校なんじゃねぇの?」

「あ、朝いちばんに・・・・」

「その保障はどこにあんだよ、おまぁが寝坊したら俺は一日中ここにいなくちゃなんねぇだろうが」

「・・・・・・・・そ、それ・・・は・・・・」



頬を赤くし、唸る香に、僚はニヤリと笑みを浮かべ
とどめとばかりに「あと、どんなに探してもこの家にあるのはこの傘一本だけだかんな」と言
われてしまえば、もはや他の選択肢などあるわけもなく
香はガックリと肩を落とし、小さく「・・・・わかりました」とつぶやいたのだった



「うぅぅぅ、なんか・・・・すっごく居心地悪いんだけど」

「おまぁなぁ・・・・それが、わざわざ傘に入れてやるだけじゃなくて
送っていってやってるヤツに対する言葉かぁ?」

「だ、だって・・・っ!!」



かなり大きな傘だというのに、規格外の身長体格をした僚と
やはり、平均よりも身長のある香では、大きな傘もかなり小さく
香は居心地悪そうに体をよじった



「オイ、あんまし外にでんなよ・・・・おまぁに風邪なんかひかせたら
それこそ槇ちゃんに殺さねかねんだろうが・・・」



傘の外に出ていた香の肩をグイっと掴み、傘の中へと引き戻す
瞬間「うぎゃっ!!」と色気のない声を香があげたものの
たいして僚は気にした様子も見せず、「あー・・・これがもっこり美女だったらなぁ」と
心底悔しげにつぶやいた



「わ、悪かったな!!もっこり美女じゃなくて」


「まったくだよなぁ・・・なんだって、俺が青臭いガキなんか送ってんだか」


「だ、だったらいいわよ!!、嫌々送ってもらわなくて結構!!こ
こからなら一人で十分帰れるわけ!!」


「・・・・おまぁ、そんなことして俺が明日の朝日を拝めると本気で思ってるわけ?」




それこそ「バカなのか?」と言わんばかりの目で見てくる僚に
香は一瞬意味を理解しなかったものの
自分のことになると異常に心配性になる兄秀幸を思い出した



おそらく自分がずぶ濡れで帰ったのがバレれば、それこそ普段の説教どころの
騒ぎじゃなくなるのは、火を見るよりも明らかだった
正座で2,3時間は間違いなくくどくどと説教されることだろう
それは、その原因を作った僚にももちろん言えることで
・・・・いや、下手したらもっと手ひどい目にあうことすら可能性として捨てきれない


おそるおそる視線をあげれば、「ようやくわかったか」と言わんばかりの僚に
香は諦めの溜息を一つこぼした



(・・・た、たいした距離じゃないじゃない、ほんのちょっと我慢すればいいんだし・・・それまでは・・・・っ)


「・・・・・僚?・・・それに、香か?」


「あ、アニキっ!!!」



今まさに覚悟を決めようとした瞬間聞こえてきた声に、香はぱぁぁぁっっと顔色を明るくし
僚の腕を振り払い、一目散に兄秀幸の元へと駆け出して行った



「なんだ、僚・・・送ってくれたのか・・・助かったよ」


「べっつにー、コイツに傘貸しちまったら俺が明日困るんでね、しょうがなくやったまでさ」


「そうか・・・ならそういうことにしておくか・・・・まぁ、ここまで来たんだ、せっかくだ
今日は家で一緒に夕飯でもどうだ?・・・なぁ、香?」


「・・・・アニキがいいなら、あたしも別にいいけど?」




さっきまで僚にひっつくのは嫌がっていたくせに
兄である秀幸にはなんの戸惑いも見せずひっつく香の姿に
僚は苦笑じみた笑みを浮かべ「ま、タダ飯を断る理由はねぇか・・・」と返して見せた


「本当はもっこり美人の作る飯がいいんだけどなぁ・・・ま、今回は我慢しますか」


「無理に食べろなんて誰も言ってないだろうが!!いらないならいらないって言いなさいよ!!」


「別に誰も食わんとは言ってないだろうが、タダ飯はしっかりと食べねぇとなぁ
あ、香。おまぁが作るならちゃんと胃薬用意しとけよ、僚ちゃん腹壊すのだけは勘弁~」


「・・・・アニキやっぱりコイツ招待すんのやめない?」


「僚、あんまり香をからかって遊ぶな、香も僚の戯言を流しておけ
アイツはあーいう言い方しかできない男なんでな」


「まぁ、槇ちゃんったら失礼しちゃう!僚ちゃんってばこんなに素直なのにぃ」


くねくねとシナを作る僚に、妹は冷たい視線を向け、兄は呆れた表情を浮かべる
だが、やはり付き合いの長さか、槇村はすぐに「わかったわかった、じゃぁ、さっさと行くぞ」と
香と傘を共有しながら、自宅のアパートへの道を歩き出した



ザァァ・・・ザァァ・・・・と鳴る雨の中を、二つの傘が揺れる
前を行く傘からは、楽しそうな兄妹の会話が時折僚の耳に届く
ただし、それは声だけで、二人の声は聞こえない
先ほどまですぐそばにあったぬくもりも、声も、表情も無くなったことに
ひっそりと溜息をもらすものの、僚は傘をわずかに傾けることで、それをうまく隠した




「・・・やっぱり、俺はまだまだ槇ちゃんにはかなわないってか?」





そうつぶやくと、僚はこっそりとポケットから携帯を取り出し
先ほど撮った香の写真を眺め・・・そして


ザァァァ・・・・ザァァァ・・・・と鳴る雨の音で隠すように
槇村と香にバレぬように、ピローン♪と再び電子音を鳴らしたのだった








シャッタースピード song by シド
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