[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
世界の中心には、いつもあたしじゃない誰かがいた
物心ついた頃、中心にいたのはアニキだった
アニキが笑ってくれることが嬉しかった
一緒にいられることが嬉しかった
でも、いつかアニキにはお嫁さんがきて
あたしはアニキの傍を離れなくちゃいけないのはわかっていた
いつまでもアニキを中心にしてはいけない、そう思っていた
けれど、アニキが別の人と幸せになる前に
アニキはあたしの前から消えてしまった
ぽっかりとあいた穴は大きくて、理解するのがすごく難しかったけど
けれど、代わりのように現れた僚によってあたしは再び立ち上がれた
必然だったのだと思う
アニキの代わりに、僚があたしの中心になったのは
最初はもしかしたら、アニキの代わりだったのかもしれない
憧れにも似た恋心のなせるわざだったのかもしれない
けれど、今ではもう完全に、あたしの中心は僚で
僚しか無くて・・・・
僚しかいらなくて・・・
恋心から生まれた執着なのか
それとも、自分の世界の中心へと執着なのか
僚があたしを「女」として見ないと言ったとき、あたしは確かに了承した
でも、他の女に目を向ければ、嫉妬するのを止められなかった
望むのを止められなかった
傍にいてほしかった
失いたくなかった
愛し愛されたいと願うよりも
傍にいたいと、傍に居続けたいと願うようなった
傍にいられる、それだけで・・・満足していた
けれど、時がたてばどんどん欲が出る
「女」として成長すればするほど、「男」の僚を求めている自分に気づき始める
僚という男に出会ってしまったが故なのか
アニキと一緒にいたときとは違う、「あたし」が生まれ始めていた
「ねぇ、僚・・・教えて」
「あたしは、アンタにとって・・・必要な人間なの?」
リビングで爆睡している男にそっと語りかけたのは、限界を感じていたからなのかもしれない
傍にいたいというよりも、愛し愛されたいと願う「女」のあたしの悲鳴
「もし・・・もしも・・・・」
「アンタにとってあたしが、必要なら・・・・」
ゆっくりと柔らかな髪に触れる
その感触を確かめながら、ゆっくりと目を・・・閉じる
「どうか、離さないで・・・逝かないで」
「ひとりに、しないで・・・・」
(あたしを・・・・アイシテ)
心の言葉を言わなかったのは、きっとまだ「女」になる覚悟がないから
「女」になってしまえば、「今までのあたし」の場所が無くなるかもしれない
僚があたしの「中心」であることは変わらない
「傍を離れたくない」という欲求は変わらない
だから、どんなに「女」のあたしが悲鳴をあげようとも
「今までのあたし」の「しあわせ」を壊すことはできない
この手を、この温もりを・・・離すことが、僚のためなのだとしても
僚の命の炎を少しでも長く燃やし続ける最善の方法なのだとしても
それでも・・・あたしは・・・・
「・・・・僚」
( あ い し て る わ )
声にださなかった言葉を誤魔化すように
最後に一度だけ僚の髪を撫でると
あたしは、逃げるようにあたしは自分の部屋へと戻った
ダイヤモンドクレバス BY シェリル・ノーム starring May'n
≪ OVER | | HOME | | Puppy love ≫ |