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恋愛下手のくせに、香のヤツはやたら恋愛関係のものを好む
それはドラマだったり、映画だったりと様々だが
そういった恋愛ものを見るたびに、頬を染めてため息をついたり
涙ぐんだりしている・・・・俺からすればどこがどういいのかサッパリわからんのだがな
にも関わらず香の脇で黙って同じテレビを見ているのは
主演女優のもっこりちゃん目当てだったり
もしくは、濡れ場シーン目的なのだが・・・まぁ、俺の秘蔵もっこりビデオ&DVDに比べれば
可愛いもんだが、あの喘ぎ声はたまらんっ!ぐふっw
「はぁ・・・いいなぁ、一度でいいからあんな恋愛してみたいもんだわ」
ドラマが終わり、ため息にも似た呟きをする香に俺は眉をわずかにひそめた
「おまぁ、もしかしていい年こいて白馬に乗った王子様が~なんつー馬鹿げた夢見てるわけ?」
「いい年って、アンタよりもずっと若いわよ・・・それに、誰が白馬の王子なんて言ったのよ
ただ、あたしもさ・・・こう、『あぁ、恋愛してるんだぁ~』っていう気分を味わいたいと思っただけよ」
「ボキちゃんは万年ハタチだもんねぇ~、そして、んなことはまずは相手を見つけてから言えつーの・・・さて、今週のミナちゃんも見れたし、ボキちゃんちょっと出かけてくるねぇ~♪」
うっとりとしている香を横目に、俺はさっさと立ち上がると、ジャケットを手にし、外へと向う
「ちょ、ちょっと!!アンタこんな時間から外に行くつもりなの!!?」
「何を言うカオリクン!!夜はまだまだこれからではないか!!というわけで、リョウちゃんを待ってるもっこりちゃんのところレッツゴー!!!」
「あ、コラ!!待てこらっ!僚ぉっ!!!」
香の怒声に見送られ、俺はスタコラサッサと逃げるように外へと出た
新宿の街はまだまだ眠らない
不夜城の異名を取る街だ・・・まだ0時前なら余裕でどの店も開いてるってもんだ
普段であればこのままキャバクラなりなんなり行って、かわいいもっこりちゃんと戯れながら
酒を煽る・・・というのが定番なんだが・・・なんとなく、そんな気分にはなれず
静かに飲める小さなバーへと向った
顔なじみのマスターと軽く挨拶を交わすと、俺はそのまま酒を煽る
静かな店内に雰囲気を壊さぬようにそっと流れるジャズの曲を耳にしながら
俺は先ほどの香の台詞を思いだしていた
『ただ、あたしもさ・・・こう、『あぁ、恋愛してるんだぁ~』っていう気分を味わいたいと思っただけよ』
「なにが恋愛してる・・・だか」
カランと音をたてる氷に微かに指をつけながら、俺は静かに酒を煽る
もし、香がそういった『恋愛』というものができるのであれば・・・相手は、誰なのだろうか
過去の依頼人か、俺の知らない誰かか・・・・
まぁ、一つ言えるのは、間違いなく俺じゃねぇってことだけだろうが・・・
生憎、ドラマのようなベタベタの展開も、くそ甘い台詞も俺の中には無いし
あったとしても言う気はサラサラ無い
ドラマでよくあるハッピーエンドも、俺と居ちゃいつまでたっても迎えられやしない
もし、仮に俺がドラマのような恋愛、なるものをしたとしても、それは『一夜の恋』でしかない
今までの依頼人のように、過ぎてしまえば忘れるような・・・そんなものだけだろうさ
そもそも俺は束縛されるなんざまっぴらゴメンだしな・・・・
・・・・・・あとは、香自身にしても、『恋愛ドラマ』を演じるには無理があるだろうな
「・・・まずはあの鈍感体質は無いだろしなぁ、あとは・・・アイツなんだかんだで押しに弱いからなぁ、最終的にはビビって逃げるってパターンだな、ありゃ」
過去の依頼人の中で何人か香に惚れたヤツがいた
香を託してもいいと思えるヤツもいた
・・・だが、なんだかんだで香はそいつらの手を取らずに、今も俺のそばにいる
そいつらの手を取っていれば今頃平凡な幸せつー、槇村が願っていたであろう未来があっただろうに
それこそ、仕事が無いだの、金が無いだの騒ぐことも、ハンマー振り回して新宿の街を駆け回ることだってなかっただろうさ
(・・・・・けっ、バカバカしい、何考えてんだか)
一人で酒を飲んでいるというのに、まったく酔えないどころか
考えているのは香のことばかりで・・・あまりにも情けない自分の姿に俺は苦笑を漏らすと
マスターに金を払うと同時に情報も仕入れ、さっさと家へと向った
なんだかんだで結構バーに居たらしく、家に着く頃にはすっかり午前様となっていた
逃げるようにして家を出たからなぁ、暴れるだけ暴れた香は今頃布団の中だろう、と予測をつけるも
家の扉を開いた途端聞こえてくるテレビの音に俺は眉を潜めた
テレビの音のするリビングに向えば、そこには予想通り、ソファに寄りかかって眠っている香がいた
念のために周囲を見るも特にコレと言って異変は・・・・
「・・・あーあー、夜中にこんなもん食いやがって・・・それ以上体重が増えても俺は知らんぞ?」
よっぽど腹が立ったのか、香はコーヒーのお供に客用だと言っていたそこそこいい値段のクッキーを引っ張りだしてきていた
しかも、よくよく見ていると、コーヒーも普段のものとはいささか香りが違う・・・たぶん、これも俺に隠しているそこそこいい豆を使ったのだろう
ったく、これぐらいのことでヤケ食いなんかするなよなぁ・・・・
「んぅ・・・リョ・・・の、ば・・かぁ・・・」
「へいへい、バカで悪かったな・・・けどなぁ、こんなところで寝て風邪でも引いたらおまぁのほうがバカだろうが」
寝返りを打ちながら寝言を呟く香に、俺は呆れながらも香を抱き上げ、部屋へと連れて行く
抱き上げれば香がどれだけ細く、そして柔らかいのかを直に知ることになるため
俺としては極力避けたいのだが・・・さすがにこのお姫さんをこのまま放置するわけにもいかんからなぁ
はぁ・・・リョウちゃんってば健気だねぇ~
「ほら、香・・・ベッドに着いたぞー・・・・暴れるなよ?」
「ん・・・ぅうん」
ベッドに降ろし、布団を掛けようとするも香はどうもまだご機嫌が治っていないのか
いやいやと首を横に振って俺にしがみついてきた
・・・・オイオイ、なんの拷問だ?なんの罰ゲームだよこれ?え?オイ?
「・・・りょ・・・」
「はいはい、リョウちゃんですよー。わかったらさっさと放して」
「・・・が、いい」
「・・・・・・・・は?」
「りょ・・が・・・・・い、い」
このお姫さんは・・・ぎゅっと俺なんかにしがみついて何言ってんだか・・・
オイ、わかってんのかおまぁ?
ここはベッドで俺は男で、おまぁは女なんだぞ?
いくらもっこりしない唯一の女だなんだと言っても、俺の鉄壁の理性にだって限界はあるわけでだな
ていうか、俺にはお前の望むような『恋愛』なんつーもんはできやしねぇんだぞ?
そこんとこちゃんとわかってんのか?なぁ、香?
「・・・・・本当に、バカなヤツ」
しがみついて離れない女を支える、という大義名分を掲げ
俺はそっと眠る香を抱きしめ
明日起きたら間違いなくハンマーだな、と覚悟しつつ、香と一緒に小さなシングルベッドに横になった
「ロマンチスト・エゴイスト」 song by ポルノグラフィティ
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