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夜中に電話のベルが鳴った
その瞬間に、わずかに予感めいたものを感じた
Truu・・・・Truu・・・・Tru
「・・・・はい、もしもし?」
「・・・・よぉ、今大丈夫か?」
「ん・・・平気だけど、なに?何かあった?」
「いや別に・・・」
「用が無いのにかけてきたの?」
「・・・・・悪かったか?」
「・・・・・・・・・別に、珍しいなって思っただけ」
「気紛れだからな」
「気紛れなんだ・・・・酔ってる?」
「そう・・・思うか?」
「・・・・どうだろ、半分酔ってて、半分は違う、ってとこかな?違う?」
「当らずとも遠からずってヤツじゃねぇの」
「ふー・・・・ん、それで、本当にどうしたの?僚」
「別に、本当に意味なんてないんだがなぁ・・・・」
「・・・・・電話代、もったいないよ?」
「相変わらずケチくさいねぇ・・・香ちゃん」
「倹約家って言ってよね・・・・・・本当に、変よ、アンタ」
「・・・・・・変、か」
「そう、変、普段から変なくせに、今日は拍車をかけて変ね」
「クッ、言ってくれんじゃないの」
「反論があるなら聞くけど?」
「・・・・・反論ねぇ・・・・まぁ、できなくもないが、止めとくわ」
「何よ、それ、・・・・敵前逃亡ってヤツ?」
「押してばっかじゃなくて、引くこもと戦略の一つなんでね」
「・・・・・引いてばっかのヤツの台詞じゃないわね」
「・・・・・・・・・そうだな」
流れる沈黙、お互いが何も言わず
ただ電話越しに息づかいだけが聴こえる
それが耐え切れなくなったのは、女のほうだった
「用が無いなら切るわよ、明日も早いし」
「・・・・・香」
通話を終わらせようとした瞬間、引き止めるように僚が香の名を呼ぶ
香は最初何も言わなかったものの、間を空けて「・・・・なに?」と聞き返した
「明日も・・・・電話、していいか?」
「・・・・・・・勝手にしたら?」
プッ、ツー・・・・ツー・・・・
それ以上続けることが、耐え切れずに通話終了のボタンを押した
通話時間は5分にも満たない
それでも、香は携帯をぎゅっと握り締めた・・・・そして、何かを耐えるように
大きなため息を吐いたのだった
プッ・・・・
そして、僚もまた、通話終了のボタンを押すと、ポイっとベッドへの端へと携帯を放り投げ
自分の顔を隠すように腕で自分の顔を覆った
「・・・・・何、してんだか」
うっすらと口元に浮かび上がったのは自嘲にも似た笑みだった
手を離したのは・・・遠くへ突き放したのは、間違いなく自分だと言うのに
それなのに、彼女に電話をするなど・・・・・気がふれているとしか思えない
「・・・・・・情けねぇ」
手を離し、突き放しながらも電話をしたことも
溢れてくる「会いたい」という言葉を口にしないのが、精一杯だったこと
全てが情けなくて、僚は一人暗い部屋でクツクツと笑い声を漏らしたのだった
「僕の罪」 song by B'z
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