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優しい夜明け







終わりなんて、ないのかもしれない
そう思うときもあった

報われない恋なんだと
花開くことはないんだと

どこかで覚悟して
どこかで決め付けて

そばに居られれば
一緒にいられれば
パートナーで、いられれば・・・

そう思ってきた
そう思ってこれた



痛い言葉で傷ついたときも
泣き声を我慢したときも
不安に駆られたときも



その思いだけで乗り切ってこれた
そう考えることで乗り越えられた



なのに・・・・



「・・・・・なんで?」


ぽつりと、あたしは僚に問いかける
その問いに僚は答えない
かわりに、あたしたちはただ、お互いをじっと見つめ続けた



先ほどまでなんでもない、時間だった・・・
いつものようにリビングに居て
いつものように夕食後の時間をまったりと過して
今も、テレビに映るバラエティに笑っていて・・・
特に何も・・・何も・・・・無かったはずなのに・・・・


「どうし、て?」



声が震える
どうしていいのかわからなくて
何がしたいのかわからなくて


「・・・嫌だったか?」

「ちがっ!!そ、そういうことじゃなくて!!!そうじゃなくて、・・・・っ」


僚の問いに、必死に首を横に振る


(違う、違う・・・そうじゃない、そんな答えが聞きたいんじゃないっ!!
 落ち着け!!落ち着けあたしっ!!!)


落ち着こうとする、必死に・・・必死に落ち着こうとする
けれど、心臓はまるで全力疾走したかのようにバクバクと鳴っていて
体はカタカタと震えていて・・・・
体中の血液が沸騰したかのように、全身熱くて・・・・



「・・・・香?」



聞いたことのない声だった
いつもの僚の声なのに、僚じゃないみたいな声
『あたしが聞けるはずの無い声』
その『声』で、僚が『あたしを』呼んでる



「・・・・これは、・・・・夢?・・・・・それとも、何かの・・・・終わり?」



夢なら今すぐ覚めてほしい
そして現実に戻りたい
じゃないと、戻れなくなる
戻りたくなくなる


終わりならなかったことにして
終わらないで、何も、終わらせないで


我慢するから
泣かないから
泣き言だって言わないから


トラップも
家事も
節約も


全部、全部・・・頑張るから、だから・・・・




「・・・・終わりは、怖いか?」

「怖い、よ・・・・」


怖い
怖い
怖い・・・終わったら、その先にあるのは・・・・


その先に、あるものは・・・・







「俺が・・・・怖い、か?」





その言葉に、一瞬、息を呑む
けれど、すぐにブンブンと首を横に振る


怖い
とても、怖い

けれど、それは『変化』のこと
その『変化の先』を恐れてるだけ、『終焉』が怖いだけ・・・



僚は・・・僚は、怖くなんかない・・・
怖い、はずがない・・・



「なら、怖がるなよ・・・・」



僚が、笑う
今まで見たことの無い・・・困ったような、泣きそうな
少し情けない顔で、笑う
でも、それは本当に一瞬で、すぐにその笑みは消えてしまって
変わりに、あたしは僚の腕に引き寄せられるように僚の胸へと閉じ込められた



「怖がるな、香・・・・」

「僚は・・・・僚は、怖く・・・ないの?」



終わりが
変化が
終焉が


あたしの問いに、僚はしばらく無言を貫き
・・・・そして、小さく「怖さよりも、欲しいものができた」と言って
再び、あたしに・・・・触れた・・・・



一瞬だった
さっき、テレビを見ているときも
今、こうして触れたときも



ほんの一瞬
ほんの一瞬だけ、唇が触れた



けれど、それは・・・・確かに、何かを壊し
変えて、終焉を告げるもので・・・・そして



何か、新しいものが始まる・・・・幕開けでもあった・・・・・・






「優しい夜明け」 song by see-saw
 

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