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槇村香という女は、よく攫われる
ただし、攫われる原因はアイツではなく俺のせい
それでも、まぁよく攫われるもんだと感心しつつ
一応相棒である彼女を助けるのも毎度俺の役目
当たり前だが、サシで来れない雑魚に俺が手を焼くわけもなく
毎回たいした被害もなく救出できる
んで、香も香で「遅い!!なにしてたんだよ!!」とかわいくない台詞を吐く
どんなに怪我をしていても、見えない場所に青あざを作っていようと
まるで「なんでもありませんでした」と言わんばかりの顔をして悪態をつく
ただし、ちょっとしたアクシデントやなんやで俺が怪我をすれば、その悪態はなりをひそめ
一瞬、今にも泣きだしそうな顔をして俺を見る
いや、別にこれぐらいたいしたことねぇぞ?と思いつつ口を開こうとすれば
「まったくドジねぇ、なにしてんだか・・・」とこれまたかわいくない台詞を吐きながら
手当をする・・・そして、手当を終えた後、最後の最後で、「ごめん」と消え入りそうな声で謝る
(・・・・・いや、なんでおまぁが謝るわけ?ふつう逆なんじゃねぇーの?)
攫われた原因は俺で、おまぁはとばっちりを受けたんだろーが
縄で腕をしばられて傷になった腕や、殴られた跡のほうがずっと痛々しいだろ?
なのに、なんでそこでそんな顔するわけ?しかも謝罪つき?
「おまぁはバカだろ?」声を大にして言いたいつーの
「じゃ、じゃぁあたしそろそろ寝るね!!アンタもあんまり夜更かしするんじゃないわよ!!」
まるで逃げるように俺のそばを離れる香を、俺は黙って見送る
その後ろ姿を眺めながら、「あぁ、コイツ・・・また泣くのかもな」と思った
もう両手じゃ数えきれんほど攫われてるくせに、飽きもせずに香は毎度毎度落ち込む
特に俺が怪我をした日は余計に落ち込む
アイツのことだ、自分のことを足手まといだなんだと責め立ててるんだろうさ
実際、何度か気配を消してアイツの部屋の前まで行ったが・・・
そのたびに、普段の明るさが嘘のように静かに泣く声が微かに俺の鼓膜を震わせた
上っ面の言葉で慰めることなどいくらでもできる
だが、おそらく・・・香は俺のそんな言葉をはねのけるんだろうさ
実際に、一度慰めようとしたとき・・・アイツは俺の目をまっすぐ見つめ睨んできやがった
まるで「口出しするな!!」とでもいうかのように・・・
事実、こういった問題は香自身が乗り越えなきゃならん
一番簡単な「パートナー解消」という逃げ道はいつでも用意してるつーのに
アイツは見向きもしねぇでやんの
「意地でもパートナーで居続ける気かねぇ、あのお嬢さんは」
泣かなくてもいい涙を流し、傷を負い、それでもこの場に居たいという
毎度毎度かわいくない言葉を吐き、悪態をつきながら、なんだかんだと世話を焼く
「なんとも・・・まぁ、変り者つーか、なんつーか・・・・」
ぬるくなったコーヒーをグイっと飲み干し、先ほど香の手によってまかれた包帯をなでる
明日の朝、多少目を腫らしていても、普段通りに振る舞うであろう女の姿がありありと浮かび
ひっそりと苦笑する
「あーいう態度をとられちまうとなぁ、、こっちもまこっちで、いつも通りに行動するしかないよなぁ・・・あー、ボキちゃん怪我人なのに、朝からハンマーはキツイかも」
いくら慣れた痛みとはいえ、正直キツイかもなぁ、なんて考えつつ
香にバレぬよう、ジャケットを羽織り、アパートの外へと向かう
「ま、その分バカでストレス発散でもさせてもらうかね」
バカを通りこして、愚かとさえ言える女に手を出し
あまつさえ泣かせる要因を作ったバカに天誅をくらわしても、さして問題はないよなぁ
「ま、その変わりといっちゃなんだが・・・俺に天誅をくらわせられるのは、それこそアイツぐらいだしな」
微かに口元に笑みを浮かべると、慣れた手つきで愛車へと乗り込み
夜の闇へと消えていった
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