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秘密の懺悔




パラレルといえば、パラレルです

カオリンが教会で懺悔をする様子が描かれています

気になる、という方のみ読んでやってくださいませ














いろいろ降り積もる思いというものがあって
誰にもいえやしない言葉があって
けど、一人で抱えるのがつらくて・・・たまらなくどこかに吐き出したくなる
そんなとき・・・・・いつの頃か、あたしはこの場所へと足を運ぶようになっていた



「・・・・今日も、やっちゃったんです・・・別に、やりたくてやってるわけじゃないんだけど
・・・どうしても・・・その、我慢できなくて・・・アイツをハンマーで地面に埋めてきました
ちなみに、今日のナンパの相手は、すごく美人の女子大生で・・・
たぶん、ミスなんとかっていうのに選ばれてるんじゃないかってくらいのレベルだった
べ、べつに、それに嫉妬したわけじゃないけど・・・
つい、いつもよりも威力のでかいハンマーで殴ってきちゃいました・・・」



静かな空間で、あたしはポツリ、ポツリ、と話を始める
大人一人がようやく入れるような小さな小部屋
そこに用意されていた椅子の上で行儀悪く膝を抱える



「でも、本当はこんなことしちゃダメだって、わかってるんです
アイツが他の人を追いかけたり、ナンパしたりしても、あたしにソレを止める権利ないってことぐらい
十分・・・わかってるんです・・・・・・アイツとあたしの関係は、幼馴染みたいなものでしかなくて・・・・
アイツの付き合いにあたしが口出しする権限なんてこれっぽちも無いって
ちゃんと・・・ちゃんと、わかってるんです」


 

ぽつ、ぽつ、と話しながら、じんわりと目に涙が浮かぶ
普段なら誰かに見られる前に乱暴に拭ってしまうソレも
ここにいるのがあたしだけで、涙を流しても誰にも見られることはないという安心感から、
あたしは滅多に人前でさらすことのない涙をぽろりと一つこぼした



「でも、わかってても・・・なんだかんだと理由をつけて、ハンマーで殴っちゃうんです
それで、頭にきたアイツと口喧嘩することで、妙な安心感と満足感に満たされちゃって
・・・最悪ですよね、ただのだだをこねる子供でしかないって、ちゃんとわかってるのに・・・」



『・・・・・・随分と・・・彼を好いているようだね』




静かな声が響く
その声にわずかにビクッと体を震わせる
しばらくは無言でいたものの、一呼吸置いてから、あたしは小さく「はい」とうなずいた
この声には、ここでは、あたしは意地を張らずにすむ
この場所では「隠す」という行為をしなくていい、ありのままをさらけ出せる場所
いつもいつもため込んでいるものを吐き出すように、あたしはただただしゃべり続けた
だって、ここは・・・・『罪を告白してもいい場所』だから



「アイツにとって、あたしは幼馴染・・・下手すれば、妹のようなものだってわかってるんです
年だって、すっごく離れてるし・・・・それに、あたしアイツの言う守備範囲外だし・・
アイツの好みは匂い立つような色気のある大人の女性で、あたしみたいな子供じゃない
でも、それでも・・・わかってても・・・・
好きなんです、ずっとずっと前から、アイツだけなの・・・アイツ以外、好きになれないの・・・」


 

女にだらしなくて、ぐうたらで、束縛されるのが嫌いな変態野郎・・・そういうヤツなのに
・・・あたしは、どうしようもなくアイツが好きなの・・・・諦められないの
何度も何度も、突き放すようなことを言われて、傷ついて、それでも・・・それでも、傍にいたいの

 


「アイツが・・・僚が・・・・好きで、・・・好きすぎて・・・・おかしくなっちゃいそうで
あ、あたし・・・怖い、怖いのに・・・」



あふれる涙のままに
あふれる想いのままに
あたしは『罪』を告白する



「止められないの、馬鹿みたいに・・・・僚が、好き・・なの・・・
・・・・・僚じゃなきゃ、ダメ、なの・・・」



静かな小部屋で、あたしの声と、抑えきれなくてあふれる鳴き声だけが響く中
ゆっくりとした口調で『父と子と聖霊のみ名によって、あなたの罪をゆるします。』という
柔らかな声がやんわりと響いた

 



*****************

 


「・・・・すいません、神父さま・・・いつもいつも」



小さな小部屋から出ると、そこには先ほどの柔らかな声の主である神父さまが立っていた
神父さまはあたしを見ると、にこりと笑い
「いやいや、これがわたしの仕事だからね」と言ってあたしの頭を撫でてくれた



「神父様・・・・海原さんに、告解室を勧めてもらってよかったです
もう、ずっと溜め込んでて、・・・いつのまにか苦しくてしょうがなくなってたんです
・・・・でも、ここですべて吐き出してからは、
また明日から頑張ろうって思えるようになったんです
・・・無駄な努力だとは思うんですけどね」



神父様に撫でてもらうのは心地いいけど、やっぱりどこか気恥ずかしくて
誤魔化すように笑うと、神父さまはただ笑って「君の思った通りにしてごらん」とだけ言ってくれた
それが下手な慰めなんかよりもずっと嬉しくて、あたしは「はいっ!!」と力の入った返事を返した



「それじゃぁ、海原さん!!また来ますね!今度は告解室じゃなくて、普通にお祈り・・・はちょっと苦手だから、遊びに!!」


「うんうん、いつでも待っているよ・・・気を付けてお帰り」


「はい!それじゃ、失礼しますっ!」



ぺこりとお辞儀をして教会を飛び出した
そう、くよくよせず、また明日から頑張ろう!うんっ!
自分に気合いを入れるように、「よぉーしっ!!がんばるぞーーっ!!」と叫び
あたしは今度こそ教会を後にした


 

 

*****************

 


「・・・・本当に素直でかわいらしいお嬢さんだ・・・・お前もそう思うだろ?僚?」


「・・・・・・・ただ単純なだけだろ、可愛げなんてないさ」


ギィィイイッと音をたて告解室の扉が開く
香の出てきた扉と逆の扉、つまりは、『本来神父が入る扉』から、のっそりと出てきた男に
神父は笑って出迎えた



「おや、その様子だと今日もまた、随分とね熱烈な『告白』を受けたようだね」


「・・・・・告解室での告白内容については他言無用じゃなかったのか?」


「あぁ、もちろんだ・・・そして、そこには本来わたしが入るべきであって、お前が入るべきでもないがね」


「・・・どこぞの不良神父の代わりをしてやってるだけだろうが」



フンっとそっぽを向く男、僚に、やれやれと神父はやれやれと肩をすくめ
「お嬢さんも、随分と大変な相手に惚れこんでしまったものだねぇ」と呟けば
僚は「・・・知るかよ」とだけいい、用は済んだとばかりに教会の外へと向かおうとする



「僚、たまにはここだけはなくてホームにも顔をだしてやれ、皆喜ぶ
もちろん、お嬢さんも一緒だとより助かるがね」


「・・・・・・・・・・・覚えていたら、伝えとくさ」

 


そういって今度こそ教会を出て行った『息子』を見送ると
ゆっくりといつも座っている椅子へと腰かけ、先ほどチラっと目に入った耳の赤さにくすくすと
笑みを漏らしたのだった



「告解室でのみ、弱めを吐く恋する乙女と、そんな乙女に正体を隠し、声帯模写までして見守る男
・・・・・・神よ、あなたはこの二人をどのようにお考えになりますか?」



神への問いかけにも関わらず、海原はすぐにマリアから再び視線を扉へと向け
小さく十字を切った



できれば、この先・・・・あの不器用な二人の道が重ならんことを・・・
 


愛する愚息の想い と 涙ながらに想いを告げる少女 を脳裏に浮かべながら
小さく「アーメン」と祈りの言葉をささげたのだった






************************


香と僚は幼馴染です

そして、僚は海原の教会に引き取られた孤児で

普段は海原のことを「海原」もしくは「親父」と呼んでいます

実は香と僚は少しの間だけ一緒に孤児院(ホーム)にいたとか

そんな裏話もあったような、なかったような(爆)


・・・・・・ま、またパラレルで、すいません
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