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素敵な君




 

「ねぇ、冴羽さんは宝物はみんなに見せびらかしタイプ?それとも隠しちゃう方なのかしら?」

 


いつものようにツケの聞く喫茶店で、いつものようにコーヒーを啜っていると
唐突にこの喫茶店の数少ない長所、美人ママである美樹ちゃんが話しかけてきた

 

「んぁ?美樹ちゃんどうしたの?いきなり?・・・・あ!わかった!!ついにタコからリョウちゃんに乗り換える気に!!」


「残念、わたしは永遠にファルコン一筋よ・・・で、どうだったの?」

 

めんどくさそうな質問を煙にまいてしまおうとしたが、「その手には乗らないわ」と言わんばかりの満面の笑みに
俺はわざとらしいほど、ガクッと肩を落とし机につっぷしてみせた

 

「なぁんで急にそんな話になるわけー?リョウちゃん意味わかんなーい」


「ふふふ、昨日香さんと話してたのよ、ちょうどその時にTVでお宝自慢みたいなのがやっててね
TVの人たちみたいに自慢したがる人と、隠したがる人、どっちのタイプなのかしらねー?って」


「・・・・・さようで」

 

またどうでもいい話題で盛り上がったのね・・・とそれこそ何を言われるかわからん言葉をコーヒーで流し込み
「そういう美樹ちゃんはどっち派なわけ?」と話を振ってみる

 

「わたし?わたしは・・・そうねぇ、どちらかというと自慢したい方、かしらね?
素敵なファルコンをみんなに見てほしいもの」


「・・・・・美樹ちゃん、そりゃ一種の公害の間違いじゃ」


「あら、冴羽さん、何か言ったかしら?」

 

瞬間自分を襲った殺気に、俺はすぐさま「い、いえ、なんでもありましぇん」とホールドアップをすることで
戦意が無いことを伝えれば、ふぅー・・・と溜息をつくことで美樹ちゃんの殺意が消えた
が、俺はカウンターテーブルの下にあるマシンガンがいまだにちゃんと仕舞われていないことに、ひやりとした汗を流した

 

「で、結局冴羽さんはどっち派なの?見せたい方?それとも見せたくない方?」


「そんなこと言ってもなぁ・・・俺に見せびらかしたいほどいいもんなんてないしー?
かといって、隠すほどのものもねぇしなぁ」

 

そもそも「宝物」なんてもの自体存在しないつーのにどうしろっていうんだか
ありもしない仮定の話なんて、それこそ俺の趣味じゃねぇつーの!
というわけで、三十六計逃げるが勝ち!ってね
俺は残り少なかったコーヒーを一気に飲み干すと「ごちそーさん」という言葉だけ残して席をたてば
「あ、冴羽さん!!」と俺を呼び止める美樹ちゃんの声に聞こえないフリをしつつ
街にいるもっこりちゃんたちに声をかけるべく店を飛び出した

 


「・・・・大事なもの、ね」

 

キャッツから遠ざかった後、なんとはなしに呟いた言葉に、俺はわずかに口角を上げた

 

「ま、手に入れちまったとしたら、絶対に誰にも見せやしねぇだろうな」

 

誰にも見せないように、大事に大事にしまいこんで、
この世で俺だけが見て、触れて、感じることのできる
俺の、『唯一』


『 リョウ 』


一瞬だけ脳裏に浮かんだ姿に、さらに口角が上がりそうになり
わずかに顔をうつむかせ、俺は街の雑踏の中へと姿をかくした



fin



「素敵な君」 song by RAZZ MA TAZZ


 

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