気がつけば、色々なものが、できあがっていた
ソレを信頼と呼ぶときもあれば、距離感と呼ぶときもあり
または、二人を隔てる壁となることもある


関係も、親友の妹から、預かり者、弟のような妹、そして、パートナーと
色々名称を変えていった


その関係に伴い、気持ちも・・・・色々変化したんだと思う
憧れ、憧憬、尊敬、・・・・そして、恋心
最初からあったような気もするし、変化してできたような気もする
ただ、どういう経緯を辿って出来上がったものだとしても
確かに、今、この感情はあたしの中にある・・・・



「・・・・・僚」



ベッドに横になりながら、愛しい男の名前を呟く
きっと今のあたしは、とても弱い顔をしてる
どうしたらいいのかわからないような、そんな弱い顔
・・・でも、きっと、この瞬間、部屋の扉が開いて、あいつが来たら
あたしはこの顔をアイツに向けることはないと思う


いい意味でも、悪い意味でも、あたしたちは長く居すぎたから
兄妹のような関係、仕事のパートナーとしての関係
この関係が、いつの間にかその場面に居るべき「あたし」を作りあげていた
偽ってなんかない、それもあたし・・・
でも、アイツを好き、という「女」のあたしは、そこには・・・居ない


その顔を見せても、真正面から僚と向き合えない
何かのはずみがないと、きっかけが無いと
あたしは・・・アイツに本当の意味で向き合えないのかもしれない


「・・・好き・・・・か・・・」



いっそ服を脱ぎ捨てるように、これらも脱ぎ捨てられればいいのに
一瞬でもいい、兄妹みたいな関係も、仕事のパートナーも忘れて
「僚が好き」っていう感情だけのあたしで、アイツに向き合ってみたい


無防備に、無邪気に、何もかも、アイツにぶちまけてしまいたい
その先に待ってる「怖さ」なんて忘れて
「大好き」って笑顔で言ってみたい
ぎゅって、抱きついてみたい



眼を閉じて、想像してみる
何もかも曝け出したあたしを・・・関係も、意地っ張りな性格も、全て置いてきぼりにして
ただ、僚の元へと駆け出し、飛びついて・・・・そして・・・・・



「・・・・・・・言えるわけ、ない・・・か」



本人の代わりに作った人形を抱きしめながら苦笑する
・・・・きっと全てを取り払うことは、決してできないことじゃない
でも、それをするには、まだあたしの中で勇気も、覚悟も、出来上がってない
なにより、出来上がってしまった距離も、関係も、とても居心地がいい
膨れ上がる想いの苦しさはあるけど、それでも、この居心地の良さを手放すこともできやしない



「・・・・いくじなし、っていうんだろうな、こういうの」



僚が好き、その気持ちが音をたてて大きくなっていくのが、わかる
でも、それでも手放せない「今」もある
「今」じゃ満足できないって叫んでるのに、「今」に必死にしがみついている矛盾がおかしくて、むなしくて
・・・・・・・弱い『本当の自分』をヤツに知られるのが、怖くて
あたしはそれ以上考えることを放棄し、眠りの世界へと旅立った




（・・・・・でも、どうせなら・・・・夢の中、ぐらいは・・・・）

（・・・素直に、なり・・た・・い・・・・・・・・な・・・・・）





笑って、自分の気持ちを伝えたら、どうなるのか
どんな気持ちなのか・・・・
幸せな夢を見たいと望むように・・・・あたしはゆっくりと眠りの世界へと旅立っていった






「素肌-ノーメイク」　　song by see-saw