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この世には幾つもの見えない線が張り巡らされている
俺は、そんな触れてはいけないそれら避けて歩くのが得意だった
線があると思えばおのずと自分から距離を取り
線に触れずに欲しいものだけと掻っ攫う
そして、また距離を取る・・・そんなことばかりを繰り返していた
だからこそ、あえて線のあるヤツに近づき
その線を引きちぎり、自分のものにするミックみたいな野郎は理解できなかった
線に触れたら起こるのは厄介ごとだとわかりきっている
なんでそんな面倒なことに首を突っ込むんだか・・・と
当時は、呆れ顔をよくヤツに向けたものだ
だが、そんなことを考えていた俺の前に、もっとも厄介なヤツが現れた
俺が避けてきた『線』を幾重に持つ女
死んだ親友の妹
最後にヤツから託された存在
まだ裏を知らない、無垢すぎるほどの女
幾重にも張り巡らされた線の意味するところがわからない俺じゃないが
それでも、託された以上はコイツを傍に置き続けた
手を出しちゃマズイ存在だってことを重々承知だったし
「女」としてではなく「妹」のように接しようとも努力した・・・・んだがなぁ
「・・・・・・・・出しちまったんだよなぁ」
隣ですやすやと寝入っている女を横目に思わず呟く
ガキくさいパジャマはベッドの下で、シーツの隙間から微かに見える白い肌に
再びナニが反応しそうになり、慌てて眼をそらした
「いや、俺なりにかなり努力はしたよな、新宿の種馬って言われた俺が
何年ガマンしたんだって話だし~・・・・うん、まさに奇跡ってヤツだな」
うんうんと頷きつつも、結局は手を出してしまった手前
なんともいえない罪悪感が襲う
「・・・・・こんなこと言ったら間違いなく怒り狂うな」
それこそハンマーだけじゃすまんかもしれんと思いつつ
チラリと香を見下ろす
・・・新宿の種馬が、手を出さないためにこんだけ必死になるつーのもなぁ
当の本人はといえば、チラホラと見せ付ける『女』の仕草や表情は無意識な上に
日に日に柔らかな曲線を描いていく極上のもっこりボディにも無関心ときたもんだ
・・・・・まぁ、そうさせたのは間違いなく俺なんだが・・・
「・・・・・・なぁ、お前はこれで良かったか?」
くしゃりと香の髪をすくいあげ、そして、パラパラと落す
わずかに身じろぎするものの
そのまま再び寝息をたてる香に、俺は苦笑を浮べながらそっと頭を撫でた
「俺は・・・・・一生迷い続けて、一生後悔するだろうな」
幾重にもめぐらせた線
一本一本の線に触れるたびに、何度も足を止めた
それでも、歩み続けた
そして、その線の間を潜りぬけ、ようやく直に触れることができた
たったひとりの、なんの変哲も無い・・・・唯一無二の女
「そんで、一生おまぁを守って、抱いて・・・生き続けるさ・・・・」
俺のそばの中にいる限り
コイツは泣き止むことはない
後悔することも起きるかもしれない
たくさんの犠牲を払い、流したくも無い涙も、血も、流す日もくるかもしれない
それでも、もう・・・・線は、交わってしまった
香の線と、俺の線
幾重にも幾重にも、複雑にあった線は確かに交わり
その中心に今、俺たちはいる・・・・だから
「後悔しても、迷っても・・・・この手だけは放してくれるなよ」
きっとこの先、死に物狂いで掴み続けるであろう
細く白い手を取り、その手の甲にゆっくりと唇を落とした
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