忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

02、 君が望むなら



「ったーーー!!カオリのヤツ容赦って言葉を知らんのかねぇー・・・
はー・・・一瞬だけお花畑の向こうに槇ちゃんの姿を見ちまったぜ」


ゴキガキっと首を動かしつつ、ぶすっとした顔で歩きなれた道を進む
年がら年中人が大勢通りも、慣れたものでスイスイと肩があたることなく進む
その際、もっこり美女がいないかと横目で探すのはもはや癖という名の習慣だろう


(けど・・・ま・・・・・本気ではやらねぇけどな・・・・・)


昼間のナンパは遊び
うまくひっかかればそれはそれで、楽しむ
が、本番は夜
健全な昼の下では行われないことを目的に、春を売る女や
時たま気に入った女たちと濃密な夜を過ごす・・・


あの太陽の下でほがらかに笑うのがやたら似合う女とは正反対の世界
同じ女でありながらまったく違うタイプの美女たち
最初は気にならなかった
同居するときに面倒だな、と思う程度だった


それが、年数が片手の指で足りなくなった現在はどうだ・・・
自分から夜の花を摘むことをやめ
あまつさえ、夜の蝶たちの誘いを道化の仮面を被り断っているなど
新宿の種馬の異名はどこへ行ったんだか・・・・・

昼のナンパは遊びで、夜が本番だったのに
その本番さえ、遊びに変えちまうなんて・・・・片手の指分だけ時間を戻して
あの時の自分と対峙したら、いったいなんて言われるんだろうなぁ

美女を見かけて、成功しないとわかってるナンパを繰り出し
わざと相棒に見つかり、ハンマーをくらって
時には新宿中を駆け回る鬼ごっこを楽しんでる
しかも、夜は夜で、アパートに残してきた女の顔がチラついて
大好きなもっこり美女とのお遊びを自粛してる・・・・・なんて、今こうして自分で言ってても信じられないよなぁ


ハンマーで殴られて
説教くらって
口喧嘩して
で、いつの間にか仲直りして
俺がくいてぇーなぁって思うもんを作って一緒に飯食って
どこのガキだよってくらいに世話焼かれて
丁度いいタイミングでコーヒーを出される
テレビを見て、馬鹿みたいに一緒に笑って
別々のことをしてても傍にいるのが当たり前になってる




(なぁ・・・・・知ってるか?)


もし、もしも・・・・かつての俺自身にとどくなら


(世の中にはさ・・・・もっこりしなくても、傍にいるだけで
どうしようもないくらいに惚れちまえる女がいるんだぜ?)


伝えてみたくある
夜の世界でしか、発散できなかった俺が
昼の道を当たり前に歩いている現状を
たった一人の女の存在一つで、太陽の下の世界がやけに眩しく心地よく感じられることを


きっとこれでもかとかつての俺は顔を顰めるだろうし
信じることはないだろうが・・・・それでも、事実なんだから仕方ない
出会っちまって、一緒に暮らしちまってるんだ
指の数と同じだけの年月をアイツと過ごしてみれば嫌でもわかるさ



アレは、俺にとって・・・・最初で最後の、『女』だ・・・ってな



「それこそ、アイツが望んだら・・・・下手すると昼間のナンパもリョウちゃん辞めちゃうかも」


ボソっとつぶやいた一言はあまりにもありえないことのはずなのに
自分の中では妙に納得してしまい、思わず苦笑が漏れる
そしたら、新宿の種馬引退だって騒がれるだろうなぁ
下手すりゃシティーハンター死亡説も出回るかも
・・・それはそれで毎度面倒なお客さんを相手にしなくて済むから楽だわな
あー・・・けど、そんなことしたら俺のこのもてあますエネルギーを発散しねぇのはまずいよなぁ
・・・・じゃないと俺、無理やりアイツ襲っちまうし・・・・・



「そんなことした日にゃ、間違いなく槇村に呪い殺されるな・・・・」


大切な親友預かりもの
大事な大事なお姫さまは、もはや槇村だけのお姫さまじゃない
理性がブチ切れてアイツを泣かせるようなことをしたら
槇村だけじゃなく、俺自身も俺を許せやしないだろうさ・・・・・



(ほー・・・・んっと、たいしたヤツだよ、おまぁは・・・・・)


未だに指一本触れることすらできない、生涯無二の女の存在に胸中で賞賛の言葉を呟き
雑踏の中をすり抜けるように歩いていく

時刻はそろそろ夕暮れ、今頃アイツはせっせと食事の準備をしていることだろう
それこそ、昼間自分が新宿に局地的地震を起こしたことも
三途の河が見えちまいそうなほどの巨大なハンマーを俺に振り下ろしたことも
たいしたことない、っと言わんばかりにケロっとした顔で俺を迎えるんだろうよ


『おかえりー僚!・・・・そして、やっぱりナンパの成果はなかったみたいね』


にっこり笑ってから、すぐ呆れた顔をするんだろうな
それとも、ほら見ろと言わんばかりにニッと笑うのかもな
どっちにしろ、あの香の百面相もまたおもしろいに違いないからな
・・・・さて、ボキしゃんはどんな言葉で応戦しようかねー・・・





つらつらと、再び起こるであろう口論の内容をシュミレートしながら
夕暮れの新宿の人ごみから、あのボロボロなあのアパートへと戻るために
ほんの少しだけ、歩くスピードをあげた




fin





----------------

お題サイト「loca」さまより

雰囲気的な5つの詞:想 をお借りしました


カオリンにベタ惚れな冴羽氏の心情的なもの?
手のひらで転がされてるって思ってるのがカオリンで
一生敵わないって思ってるのが冴羽氏だと思います


PR

Copyright © Short Short Story : All rights reserved

「Short Short Story」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]