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02.口付けの意味


この作品は「涙のバースデー」での例のシーンを使用しています

原作のイメージを壊したくない

勝手にリョウの心情を語って欲しくないっ!!という方は読まないようお願い申し上げます

大丈夫な方は、下の「つづき」よりお読みください









溢れたのは、一体なんだったのか

安堵なのか

落胆なのか

それとも、まったく別の何かか・・・・


俺は目の前の香を眺めながら、内心わずかに苦笑をもらした


俺の過去をマリーから聞いたにも関わらず
拒絶することなく、再び自分の前に現れた女に
正直コイツは馬鹿なのかと本気で思った


(オイオイ・・・そこは普通引くところだろうが・・・)


そうでなかったとしてもだ、同情だのなんだのと、変な感情が芽生え
態度が多少なりとも変わってくるもんなんだが・・・

コイツは、香は・・・ゲリラや戦争がピンっと来ないとぬかして
アホみたいにあっけらかんと笑ってやがる

だが、孤独や悲しみはわかると・・・切なげな表情まで見せて


同情は、しているのだろう
だが、それは・・・・ただの哀れみではない気がした
だからこそ、香は純粋な同情を持たないのかもしれない
そういう視線を俺に向けず、変わらない、真っ直ぐな視線で俺を射抜いた



そして、なおかつ、強引に俺に誕生日を寄越しやがった
勝手に日にちを決めて、歳まで設定しやがった(だが、断じて俺は30なんかじゃねぇっ!!!)
そんで、毎年俺を祝うと、そんなことまで勝手に取り決めて
変わらない笑みで、手を差し伸べてきた・・・・


『これからもよろしく!!パートナーさん!!』


あぁ、やっぱコイツよくわかんねぇ
ていうか、女とか男とか、そういうのを超越してコイツの考えがわからん
極度のお人よしっつーのを体言したら、香っていう存在になるわけ?



(けど・・・ま・・・・、それが『香』なんだよな)



俺の抱いていたもやもやとしたものをあっさりと払拭して
笑って手を差し出す女に、俺はことのときどうしようもなく・・・・触れたくてたまらなかった



「サンキュー、香(パートナー)・・・・・」



触れたのは額
今時、小学生だってしないであろう、稚拙なキスを香に落す
俺にしは珍しいミスだと内心、呟きながら
呆然とする香を一人屋上に残し、さっさと撤退した


途中マリーに絡まれたものの
特段気にすることなくそのまま俺は自分の部屋へと向った



「・・・もしかして、ボクちゃん、思いのほか「誕生日」なるものができたことが嬉しかったのかしら?」



部屋へと戻った途端、ふぅっと一つため息をこぼし
誰に向ってなのかわからない『言い訳』を呟いた



「・・・・なんとか、ファーストキスは守ったぞぉ、槇ちゃん」



だから勘弁してくれよ、と続けざまに呟いた後、俺はベッドに横になった


ただ、胸中でなおも槇村に謝罪という名の言い訳をしつつ
『今夜だけな』とさらに言い訳しながら、先ほど香に触れた感触をゆっくりと思い出す
・・・そして、それらを忘れぬように、己の中の最奥へと仕舞いこむ




「あんなのは・・・・キスでもなんでも無いさ」




ただの愛情表現の一種だ、そう呟き俺はゆっくりと目を閉じた









恋愛未満5のお題 お題サイト: loca
 

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