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04, 夢に夢みる





「ねぇ、香さんの理想の異性ってどんな人?」

「ぶっ!!ど、どうしたの美樹さん!?い、いきなり!!?」

いつものようにキャッツでコーヒーを飲んでいたら
いきなりとんでもないことを言い出した美樹さんにあたしが目を丸くする
けど、美樹さんはそんなあたしを無視して茶目っ気たっぷりに
「あら、おかしいことなんて無いとおもうけど?」と言ってみせた


「べ、別に変とかじゃないけど・・・・と、唐突すぎるって、思っただけよ」

「ふふふ、そう確かに唐突ね・・・けど、知りたくなっちゃったのよ・・・いけない?」

「い、いけなかないけど・・・・・べ、別に、おもしろくも何とも・・・」

「それは、聞いてから判断するわ・・・で、香さんの理想のタイプってどんな人なの?」



好奇心に目を輝かせながら言ってくる美樹さんに、あたしは苦笑しながら、コーヒーを口に運ぶ


(理想のタイプ・・・・か・・・・)


ゆっくりとコーヒーを飲みながら、『そういう人』を思い浮かべ
あたしはコーヒーを飲み終えると同時に、ゆっくりと口を開いた


「そうだなぁー・・・・外見は別に拘らないけど・・・あえて言うなら優しい感じの人がいいかなぁ?
性格は、そうねぇ・・・真面目で誠実!!
やっぱりこれが一番よねぇ・・・でも、ガッチガチの真面目って感じじゃなくて
ちょっと抜けてるところがあったりするといいなぁ
でも、あたしが何かまずいこととかしたら、ちゃんと叱ってくれるような頼りがいがある一面も欲しいかも
それで、お金とかの面もしっかりしてて・・・・・なによりも、あたしだけを見ててくれる
・・・うん、そんな人がいいな・・・・って、美樹さんどうしたの??」


最初は考えながら・・・でも、最後のほうは少し熱を入れながら語るあたしに
美樹さんはポカー・・・ンとした顔であたしを見ていた
そして、あたしの声で正気にもどったのかハッとした顔で「あ、その、ちょっと意外だったから」と笑って見せた


「意外・・・そうかしら・・・そんなにあたしの理想って変?」

「え!?へ、変ってことじゃなくて・・・・・・・あっ!外見!!外見はやっぱり逞しい方がいいのよね?・・・例えば、こんな人とか!!」


そう言って美樹さんが近くにあった雑誌を引き寄せてあるモデルさんを指差す
どちらかというと筋肉体質で、ガッチリとした男の人

「えー・・・・あたしはそれより・・・・コッチかな?」

そう言って別ページを指さす
どちらかというと線が細くて、白いYシャツの似合う清潔感漂う学者さんみたいな人
このモデルさんお洒落としてかな?
メガネをかけてるんだけど、それがまたあたしの目にはかっこよく映った


「・・・・こ、この人?」

「うんっそう!優しそうだしかっこい・・・・って、美樹さん?」


なぜか美樹さんはちょっと顔を青ざめさせていた
あ、あたし、なにかマズイこと言ったかな??


「・・・・あ、あの、あたしの理想のタイプってそんなにおかしい?」

「え!!?あ、そ、そんなことないんだけど・・・・その・・・・冴羽さんと、あまりにかけ離れてるから」

「僚??なんでそこで僚が出てくるの??」

「え!!?だ、だって・・・・香さんは、冴羽さんのこと・・・」

「・・・・へ?・・・・あ、あぁ、そういうことか」



美樹さんの発言にあたしはようやく納得するとクスクス笑い出した
なるほど、確かに美樹さんならあたしの発言にビックリするかもねぇ


「美樹さんは昔から海坊主さん一筋だもんねぇー・・・そっか、そりゃぁびっくりするわよねぇ」

「か、香さん?」



そんなあたしの行動や発言に今度は美樹さんが目を白黒させる
うふふふ、滅多にこんな美樹さん見れないから、ちょっと楽しい・・・・じゃなかった
あんまりからかうとまずいわよね、うん

あたしは、クスクス笑うのを辞めて「ごめんなさい」と一言謝罪してから
ちょっと羨ましそうに美樹さんを眺めた


「美樹さんはずーーーっと海坊主さんだけだったから、理想も実際の好きも、海坊主さんしかなかったのよねぇ」

「え、えぇ、わたしはファルコン一筋ですもの」


美樹さんはうろたえながらもキッパリと宣言してきた
さすが美樹さん、どんなに動揺してても海坊主さんへの気持ちは揺るがないのねぇ~~
たぶん、ここに海坊主さんが居たらきっと湯気出してただろうけど・・・
残念、今買出しで居ないなんて・・・・今度居るときにでも言ってみようかしら・・・なんて
考えながら、あたしは再び口を開いた


「あたしはそうもいかなかったのよねぇ・・・僚がすきかどうかは置いておいて、これでもそれなりに好きな人っていうのは居たのよねぇ」

「え・・・・ええええええええええ!!!!?そ、そうなの!!?」

「うん、意外?」

「え、えぇ・・・・とっても」


あまりにもキッパリ言う美樹さんに思わず苦笑しながら
あたしは少し冷めたコーヒーに再び口をつけた
苦いコーヒーの中に微かな甘さにわずかに目を細めたのは・・・・『あの人』を思い出したせいかもしれない


「と、いうわけで、あたしの理想はアイツなんてことにはならないの・・・・むしろ真逆ね」

「そ・・・・そんな・・・ち、ちなみにその人とはまだ連絡を」

「取ってないわ、それどころか、もう居ないもの」

「・・・え?」

「あたしの初恋の人は、アニキだからね」


そう言って、ウィンクをしたら、美樹さんは本当にぽかー・・・んとして
なんか後ろで間抜けなトンボが飛んでるし・・・うん、こんな美樹さん滅多に見れないから貴重だわ~
でも、あんまり苛めちゃ悪いかな・・・・
あたしはコトンと音をたてて、コーヒーのカップを置くとその脇にコーヒー代も置き席を立ち・・・そして


「でもね、美樹さん」





「理想と現実って、必ずしも一致しないのよねぇ、しかも正反対なんて詐欺だと思わない?」




「え?」




美樹さんがコチラを振り向くと同時にあたしは「ごちそうさま」と言って手を振って扉を閉めた
扉を閉める瞬間「香さんっ!?」っていう美樹あんの声が聞こえたけど
あえて聞こえないふりをして扉を閉める
キャッツから出れば、結構いい時間だったらしく、ほんのりと橙色に染まった景色に目を細めた
この時間に、たまにアニキと手を繋いで帰ったことがある・・・
あの大きな手がたまらなく大好きだった
・・・子供ながらに、いつか「アニキ」みたいな人と、なんて考えたっけ
そう思うとなんだか可笑しくて、あたしはつい外だというのに、クスクスと笑い声をあげてしまった



「理想くらい、夢みたっていいわよね?・・・ね?アニキ」




そう呟くと、あたしはゆっくりと視線を夕暮れの景色から戻し
そろそろ戻ってくるはずの『現実』がいる場所へと戻るために、一歩一歩踏みしめるように足を踏み出した


ほんのちょっとだけセンチメンタルに浸かってたのかもしれない・・・・だから、あたしは気づかなかった
ぽかー・・・んとしている美樹さんの足元で、あたしに気配を悟られないように隠れていた僚がいたなんて
しかも、その顔がちょっとだけ笑ってたなんて・・・・知る由もなかった





「恋愛未満で5のお題」 お題提供サイト:loca

 

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