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「時間が流れていくのなんてあっと言う間なのねぇ」
ふと、そんな言葉が口から出た
何かあった、なんてわけじゃなくて
本当に、たまたま、ぽろっと出たって感じ
だって今いるのは屋上で
たまりにたまった洗濯物をようやく干し終わって一息いれてるだけだったんだもん
そこでふっと目に入った景色を、手すりに寄りかかりながら眺めてたらさ・・・なんとなく出てきちゃったんだよねぇ
「ついこの間年が明けたと思ったのになぁ」
年が明けて、桜が咲いて、散って
暑いなんて一言じゃすまない猛暑が襲ってきたと思ったら
少しずつ肌寒くなってきて、緑の葉も徐々に色づいてきて
あー、きれいだなぁ~なんて思っていた、凍えるような北風が吹き始めて、年末だーって騒いで
そして年がまた明けて・・・・
ほら、一年なんてあっという間じゃん
だから、二年、三年なんていうのもあっという間だと思うんだよねぇ
あたしはちょっと前まで銃なんて見たことも触ったことも無くて
アニキが世界の中心のような生活をしていたのに
あたしのハタチの記念日にアニキは居なくなっちゃってさ
その代わりにアニキとは真逆のようで、でもどこか似てる僚と出会って、パートナーになって
がむしゃらに頑張って、暴走して、迷惑かけて、また頑張って、暴走してを繰り返して・・・
で、気が付いたら、僚と出会ってから10年が過ぎてた・・・・うん、やっぱりあっという間だ
そのあっという間の時間の中で随分あたしは変わったなぁ~なんて思ったけど
・・・・・10年たっても変わらないもんも確かにあんのよねぇ
街の風景も、人だって変化するつーのに
僚は10年たってもあいかわらず女好きで、夜遊びして、あたしにハンマーされてる
10年たったんだから落ち着けばいいのに、文明の利器を手にしてより活動的になってる気がするのは・・・・間違いないわね
でも、結局・・・名刺の裏に書かれた電話番号が携帯に入力されただけで
エロビデオがエロDVDに変わっただけで
えっちな雑誌のおねえさんが世代交代しただけで
やっぱり、やってることは変わらないと思う
10年前も、今も
アイツはナンパして、あたしにハンマーされて、新宿中追いかけっこして、このアパートに帰ってきて
一緒にご飯食べて、笑って・・・・うん、全然かわってないわ
僚のために掃除して、洗濯して、ごはん作ってるのも
あたしが掃除した部屋で寝そべって、洗濯した服を着て、あたしのごはん食べる僚も
10年たっても、変わらない
「この何の変哲もない10年っていう長いようで実は短い時間をさ、もっともっと過ごしたいなぁ~って思ってもバチはあたらないよねー」
「ね?アンタもそう思うでしょ?僚」
シーツや洗濯物がはためく屋上で、気配なく表れた男は、どこかいたずらがバレたような微妙な表情をしてた
10年前のあたしは、僚の気配なんて全然読めなかった
10年前の僚は、あたしにこんな顔を見せなかった
けれど
「なぁーにいきなり言ってんだよ、わけわかんねぇやつ」ってうそぶく姿は10年前から変わらなくて
そんな僚にあたしは頬を膨らませるのも10年前から変わらなくて
それがなんだか無性にうれしくて
あたしは僚の傍にいくと、そのまま僚の腕に自分の腕をからめた
「あっそ、それなら別にいいけどねー」
「そ、細かいことなんざ気にすんな・・・・って、ことでカオリンのお仕事終わったみたいだしー・・・・このままリョウちゃんのお部屋で一発どう?」
「アンタの年中発情期はいつになったら終わるわけ?」
「ボキちゃん生涯現役って決めてんの!というわけで、寝室にレッツゴーー!!」
「うぎゃっ!!ちょ!ばかっ!!おろせ!!変態!!痴漢!!もっこりばかぁあああああああ!!!」
ひょいと軽々と抱き上げる僚と
落ちないようにしつつも暴れるあたし
ギャーギャーわーわーと騒ぐのは変わらないけれど
屋上のドアが閉まった途端塞がれた唇の味が当たり前になるにはまだ時間がかかるけど
それもきっと、いつか「あっという間」だったって言えるその日がくるんだろうなって
そんなどうでもいいことを考えながら、あたしは僚のキスに溺れながら、くすりと笑った
fin
イメージソング 10years song by 渡辺/美里
渡辺美/里さんのベストアルバムを借りてきたので、書いてみましたw
10年、20年、30年、ずっとずっと二人変わらない日常の中で
少しずつ変化しつつも一緒にいられますように
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