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egoist



注意!! 

今回は最後の方がかなり、ダークな内容になります
精神的なものになりますが、少しでもダークな内容
一般とは違うような嗜好を好まない方は決してお読みなられませんようお願いいたします








































「好きよ・・・リョウ、あなたのこと・・・・愛してるの」



それはある意味僚にとっては言われ慣れてる台詞なのかもしれない
新宿の種馬や、変態もっこり男と呼ばれているものの
この男が「いい男」の部類に入ることは・・・間違いない
鍛え上げられた肉体、イケメンと言われるものではなくとも「男」としての魅力溢れる甘いマスク(ただしもっこり顔を除く)
何より、銃弾降り注ぐ危険極まりない状況で依頼人を庇いそして守る姿勢は、平和な日常から切り離された彼女たちにとってはより頼もしく映り
あまたの美しい依頼人たちの心をときめかし、そして盗んでいった
だから、この男にとって愛の告白なんてものはそう珍しいものじゃない
・・・珍しいものじゃないのに・・・・


(なんで、この依頼人は・・・・・『あたし』の前で僚に告白してるんだろう)



依頼内容であるボディーガードの仕事を無事終了し、あとは依頼人が帰宅するのを見届けるだけという状況で
最後にコーヒーでも、と差し出したのがいけなかったのか
美しい依頼人は、より魅力的な笑みを浮かべ「ありがとう」と言ってコーヒーを受け取って
そして、まるで世間話でもするかのように、「あ、そうそう」と一拍置いてから
そばで同じくコーヒーを飲む僚にむかって「愛の告白」なるものをサラリと言ってのけた


「随分唐突かつ熱烈な愛の告白だねぇ、マリアちゃん」

「あら、好きだから好きって言っただけよ?・・・それに、リョウもわたしのことが好きなのよね?」

「そりゃぁモッチローーン、リョウちゃんもっこり美女だぁーーいすきだし~」

「うふふ、そう・・・じゃぁ、報酬とは別に、わたしともっこりしてみる?」


「ちょっっ!!ちょっっとまったっっ!!!な、なにいきなりそんな会話になってんだ!!
マリアさんもコイツがどんだけ変態かわかってんの!?
リョウ!アンタもアンタでいつまでデレデレしてるつもりだっっ!!!」


まるであたしの存在なんてないかのようにな会話に、思わずあたしは立ち上がり抗議の声をあげる
でも、マリアさんは特に気にした様子もなくあたしを見上げ、そしてごく自然に首を傾げて見せた


「もちろん知ってるわ、知っててリョウがいいって言ってるの・・・それじゃダメなの?」

「だ、ダメなの・・・って、そ、それは・・・・っ」

「それに香さんはただの仕事上のパートナーなんでしょ?リョウに拒否されるならまた考えるけど
ただのパートナーにとやかく言われる筋合いはないと思うんだけど・・・・ねぇ?リョウ?」


マリアさんはまるで小さな子供のように無邪気に『正論』を口にすると
そのまま僚へと近づき、自らソファに座る僚にまたがりさらに、僚の首へと腕をまわした

綺麗で魅力的な女性に迫られてて嫌がる男なんているわけない
それが常にもっこりだの一発だの口にしてる変態男ならなおのこと
僚はいつも通り・・・否、いつも以上に鼻の下を伸ばし、自身に押し付けられる豊満な胸とむちっりとした太ももにデレデレし始める


「ま、確かに~・・・香が仕事上のパートナーであることは確かだな」

「ふふ、そうよね・・・・だったら、僚・・・このプライベートな質問にはあなたがちゃんと答えてちょうだいね?」

「ぐふっ、それって~リョウちゃんが何いってもいーいってこと~?」

「あら、もちろんよ・・・・これはわたしとあなたの・・・二人の間での質問なんですもの」


するりと白くて細い指が僚の頬を撫でる
たったそれだけ、それだけの行為がやけに香の目にセクシャルな動きに見え
何を言っていいのかわからず、口をパクパクさせる
だがそれも、マリアの言う『二人の間』という一言で、すぅー・・・・っと波が引いていくように納まった


(そっか・・・そう・・・・よね、これは・・・・二人の、問題なんだ・・・よね)


マリアの質問に対し、答えられるのは僚のみ
マリアもまた、僚からの答え以外を受け取る気がない・・・・ならば、この場にいる香は、間違いなく無関係な第三者になる
第三者という『邪魔者』だということを今さらながら痛感すると・・・痛感している・・・がっ


「あ、あたしは僚のっ、シティーハンターの・・・パートナーだから・・・・・だから・・・・・・」

「だから、なに?・・・香さん」

「・・・・・だ、だから・・・・」


きっと、昔の自分なら、あーだこーだ言ってこの場に踏みとどまってた
僚にハンマーを向けるなり、屁理屈をこねたりして、無駄に怒ったり暴れたりなんかもしたかもしれない
けど・・・場数を踏んでしまえば、自然とわかる
どんなに嫌でも、どんなに二人っきりにさせたくなくても


『この瞬間に、自分はこの場に留まることができない』


僚という男に恋をした女性たちが、最後に振り絞る勇気を・・・自分が壊すことなんて、しちゃいけない
彼女たちの勇気を、決意を、嫌というほど見せつけられた
目を潤ませ頬をバラ色に染めまっすぐに僚だけを見つめる彼女たちを、どうして自分が止められるだろうか
態度は違っても、今回の依頼人であるマリアもまた、僚に恋をしているのであれば
・・・それを妨げることなど、できはしない・・・できるはずがない


「僚・・・・ちゃんと、報告は・・・・してよね、そ、それくらいは仕事上のパートナーとしてはあってもいいでしょ!?
・・・・じゃ、じゃぁ、あ、あたしは部屋に戻ってるからさ!お、お二人はごゆっくり~・・・・なんちって♪」


グッッッと後ろに回した手を握りしめ、泣き出しそうになるのを耐えて笑みを浮かべる
きっとめちゃくちゃへたくそな笑みなんだろうけど、それでも、無いよりはマシに違いない
というか、そういう風に思わないとやっていけない
今香が考えるのは、なんとかこの場を大人しく去ること
笑みを浮かべ、ひらひらと手を振って、わざとらしく鼻歌なんて歌ったりして、でも、足だけはいつもよりも若干早くし
・・・・香は自室兼客間である部屋と向かった



ギクシャクとブリキのオモチャのように動きが鈍いことを自覚しつつも、なんとか部屋の前に辿りつくと
香はゆっくりとドアノブに手を置くと・・・先ほどまでの鈍い動きが嘘のように俊敏に部屋へと入り、そしてバタンッッッと扉を閉じた


「あ・・・あは・・・・はは・・・・・は・・・・・っっ・・・う・・・・あ・・・・・っ・・・・あっう・・・ふ・・・・っっ・・・うぅぅ」



ぎこちなく固まった笑みの形が治らない
それでも、やはり自分は根っから嘘がつけない体質らしいな・・・とぼんやりと思った
なぜなら、ぎこちない笑みを浮かべながらも、目からはとめどない涙が滝のようにこぼれだし
喉はまるで焼け付くように痛い・・・自然と出てしまう嗚咽を、香は両手で覆うことで必死に抑えた


(・・・・・なん・・で・・・・、なんで、・・・・あんな、こと・・・・)


今までも、こういうことはあった
依頼人の女性たちが僚に心を奪われるなんていつものこと、その彼女たちが僚に告白をするのもいつものこと
・・・・でも、「香さんて、冴羽さんの恋人ですか?」と聞かれることはあれど、まさか目の前で告白してくるなんて思わなかった
過去の依頼人たちは、香の目の前でそういったことはしなかった、しようと思っても、僚が先に先手を打っているか
香の目に入らないところに二人で消えていくのが常だった・・・・
例え、そういうことが行われているんだろうな、とわかっていても、やはり目の前でソレを行われると
・・・・想像するよりも、倍・・・いや、10倍は胸が痛くてたまらなかった


(・・・・・で、でも・・・・よかった・・・・・・ちゃんと、部屋まで戻って来れて)


痛くて、痛くてたまらなかったけど
それでも、ちゃんとここまで戻ってこれた
馬鹿な女の嫉妬に狂って泣きながら、「もうやめて、」なんて口走らずに済んでよかった
なにもかもめちゃくちゃにしてしまうことはできたけど、それだけは・・・絶対にしちゃいけないことだから・・・だから・・・


「・・・・・うっ・・・くっっ」



理性や理屈、思いやりなんてもの全て高い、高い棚の上に置いて
ただ、この胸を締め付けるような苦しさと痛みだけをかき抱き
----- 香もまた 僚を愛する女 として 涙を流し続けた





********************************




「香さん・・・・行っちゃったわね、見ててくれても構わなかったのに」

「なぁに?マリアちゃんは人に見られながらの方がお好み?」

「ふふ、まさか・・・でも、僚がそれでいいって言うなら・・・・それこそ、わたしは構わないけど?」

「わぁお、マリアちゃんってばダイターーン♪」


さらに鼻の下を伸ばす男に、マリアはうっとりとした表情を浮かべる
マリアは自分のスタイル、顔、そして女としての魅力に自信があった
けれど、それは同時に・・・自分をどうしようもないほど孤立させた
見た目だけに吸い寄せられる者、勝手に卑屈になる者、傍にいることで恩恵を受けようとするもの
・・・・・誰もかれもが「わたし」を見ない
自分を必死で見せようとしても、やってくるのはバカな男たちだけ・・・勝手に勘違いして、勝手に逆上する馬鹿な人たち・・・


(・・・・でも、この男は違う)


軽い言葉、態度、それは今まで見てきた男たちの中でも特別下品に映ることはあれど
彼は「もっこり美女」という数多き人たちとわたし一緒にし
かつ、「マリア」という個人も同時に見てくれた
おざなりな会話だけじゃない、まるで当たり前のように「わたし個人のため」に動いてくれる
この容姿が彼の好みだとしても、結局はそれだけ
「容姿が綺麗」というのをアクセントに、わたしを見ようとするこの男に・・・・わたしは、今まで感じたことのないほどの衝撃を覚えた


「リョウ・・・あなたってとっても素敵・・・・わたし、こんなに男性に魅力を感じたこと今までにないわ・・・・」


僚の顔の造形を確かめるように、再びゆっくりと彼の頬を撫でる
素敵・・・とっても、イイ男
この人を自分のものにできるなら、うとましいとさえ思っていたこの美貌にすら感謝できる
目の前の男に愛されるためなら・・・・わたしは・・・・



「さて・・・マリアちゃん、そろそろ答え合わせをしようか」


「・・・・・ぇ?」


その一言に、わたしの本能に近い部分が反応する
今まで目の前の男に抱かれることを当たり前のように考えていたわたしは、多少なりとも浮かれていた
今までの経験から、こうすれば互いの瞳にあるのは情欲という熱だけ
理性なんてものはこの駆け引きを楽しむスパイスでしかない
・・・・そのはずなのに・・・・・


今、わたしが欲している男の目には・・・・・・これっぽちも、『熱』なんてものは込められていなかった




「アンタのその潤んだ瞳や、ナイスバディーな体もすっごい魅力的なんだけどー・・・
生憎と、俺はアンタの魅力にはハマれいっぽいだよねぇー」


「なっっっ!?」


「ていうか、むしろアンタとセックスしてもイケない」



休む間もなく投げつけられた言葉に、わたしは初めて『言葉を失った』
・・・ちがう、そんなんじゃない
先ほどまでこの先にある熱い情事を想像していたなんて思えないほど、体が強張る
自然とほどいていた腕で自らを抱き寄せ、男の膝上にいるという現状に恐怖した

何かをされたわけじゃない
馬鹿な男たちのように暴力に訴えられたわけでもない
なのに、この男は・・・・この男はダメだと、何かが告げる
脳裏で赤いテールランプがくるくる回って危険性を示すのに、うまく体が動かない
酷い言葉を言われたのに、言い返す言葉一つ見つからず、ただ呆然と男を見つめていると
男はさきほどまでのだらしない笑みを消し、代わりにうっすらと口元を上げた




「マリアちゃん・・・基本ボキしゃんってば、女性には優しくつーのがモットーなんだけどぉ
でも、例外っていつのもあるみたい」



口調はさっきまでと同じ、軽いものなのに、他はまるで別人のようにわたしの目に映った
もっこりーと言ってわたしに迫ってくる顔でも、馬鹿な男たちからわたしを守った顔でも、ない
底意地の悪い、まるで目の前にいる獲物をいたぶる猛禽類にも似た笑みに、背筋にゾクゾクと悪寒が走る

さっきまで互いに駆け引きを楽しんでいたと思ってたけど・・・それが大きな間違いだ嫌でも認識してしまう
・・・・・駆け引きなんて、最初からなかったんだ
あったのは「彼が」遊んでいたという現状だけ
それを・・・・わたしは次に発せられる言葉で、ハッキリと認識する




「ボキちゃんってば、アイツの歯を食いしばって涙を我慢してる姿を見ただけで、ゾクゾクしてんの
で、今頃部屋で俺を想って泣いてるとか思うと、それこそイキそうになっちゃうんだよねぇ」



------ わかって、しまった



わたしが、目の前の男に惹かれた理由
見た目を差し引いてわたしを見てくれたから?
危険な場面でわたしを守ってくれたから?
違う・・・・そんなんじゃない、そんな軽い理由じゃない


・・・・・・・わたしは・・・・わたしは、この人に・・・・




「しかもさぁ、アイツの笑顔を奪うのも、咲かせるのも俺じゃないと気が済まないんだよねぇ・・・
・・・・・なぁ、これって狂ってるて思う?」




------------ 同じ匂いを 感じたんだ




誰もわたしを見てくれない、見つけてくれない
そんなふて腐れた子供のようなちっちゃいわたしと比べるなんて、それこそおこがましいだけかもしれない
でも、目の前の男は・・・・冴羽僚という男は・・・・
自分で隠して、諦めていたかもしれない「本当の自分」を・・・彼女に、槇村香に見つけ出してもらったんだ

それは、奇跡にも近い感覚
救われたような、けれど罪を暴かれたような・・・甘さと痛みを伴うもの
わたしの感覚と同じだなんて思わない、でも、それに近いものを感じたのなら
この男もまた、彼女によって「救われた」と少しでも思ったのなら・・・・



「狂ってる・・・・狂ってるけど、・・・・でも、愛して・・・・いるのね」




互いが互いに優しくしてるだけの一般的な生易しい愛じゃない
何もかも束縛して、下手をすれば相手を壊してしまいかねない危険さえある
それが時に苦痛をあたえ、なおかつ、相手の笑顔と引き換えにするものであっても
全てを支配して、相手を麻薬漬けにでもするかのように四六時中己で満たしたい



狂ってる、一般論からすれば狂ってる以外のなにものでもない
でも、もし、この感情に名前をつけるなら・・・・やっぱり、それは「愛」なんだと思う



「・・・・・わざと泣かせた相手を、今から慰めるの?それとも道化を演じるの?」

「それは、アイツ次第だろうな」

「わざと仕事のパートナーって強調したくせに?」

「仕事のパートナーさ・・・・でも、それが全てじゃない、一つの面でしかないさ」



「・・・・・・・香さん、大変ね」




気の毒だと、思う
こんな不器用で、いたずらに傷つけるような愛情表現しかできない相手から好かれるなんて
下手をすれば人間不信にだってなりかねない
・・・・でも・・・・それでも



(どうしようもなく、愛してるんだわ・・・・)




狂ってると思う目の前の男はもちろん、男の嗜好を少しでも理解できてしまうわたしも
けど、同時に理解もしてしまう
彼にとって、きっと彼女は最後の人
もう、彼がどれだけ「もっこり美女」だのなんだの言っても彼
の隣にいる最高の「女神」にかなう人なんていない、目に入ることすら・・・ない




「・・・・・・酷い人、とんだアテ馬だわ」




そう言うと、わたしはゆっくりと彼の上から立ち退き
そして、先ほど出て行った彼女と同じように作り笑いを浮かべる




「こんな形で、自分の嗜好を知るなんて・・・・最悪よ」





せめての意趣返しを込めて、皮肉気に笑えば
僚はさして気にも留めず、ゆっくりと立ち上がり「生憎、今の俺はこれしか知らんのでね」と言うと
わたしを見送りもせず、愛しい姫のいる部屋と向かったのだった・・・・・






fin







R&Kへのお題:好きだから好きって言った/「もうやめて、」/笑顔と引き換えに 

http://shindanmaker.com/122300

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