[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「僚ってさ、スナイパー辞めてたとしても詐欺師で生活できるよね?」
午後のやわらかな日差しの中
比較的穏やかに過ぎていたはずの空間に、とんでもない爆弾が落ちた
せめて何か予兆のようなものがあればいいものを
まさに突然つきつけてくる相棒に内心冷や汗を流しつつ、雑誌(エロ本)から目を上げる
「それはどういう意味かな?カオリちゃん?」
「え?別に意味なんてないわよ、至極普通の意見じゃないの?」
「おまぁなぁ、突然自分の相棒を詐欺師扱いするののどこが普通なんだよ」
俺の反論に香はきょとんとした目を俺に向ける
この瞬間、さきほどの香のつぶやきが本当に無意識のつぶやきだったのだとわかり
俺は内心盛大な溜息を吐き出した
「・・・・だってさ、僚って一見単純でバカっぽく見えるけど、いっつも重要な答えをはぐらかすじゃん」
あ、あと秘密主義だから余計に僚自身のことはわかんないし!
まさに詐欺師にうってつけだよね!!と、ポンと手をたたき
うんうんと自分の答えに納得している相棒に、俺は心底頭を抱えたくなった
(槇ちゃん、いったいコレにどんな教育を施してきたんだよ・・・)
と内心愚痴めいたことをつぶやきつつも、これ以上暴走される前になんとかさし止めるべく
俺は重たい腰をあげるかのように「あのなぁ」と口を開いた
「スナイパーが自分の素性を明かすようなこと言うわけないだろうが
それに、駆け引きつーもんもあるんだよ、そうホイホイと断言するようなこと言うわけねぇだろうが」
「・・・・・ふーん、駆け引き、ねぇ?」
一瞬間を置き、黙り込む香に、納得したか?と内心妙に冷や冷やしつつ横目にみれば
先ほどと同様にコーヒーに口づけてる姿が目にはいり、これは大丈夫か・・・
と再び雑誌に目を向けようとしたそのとき・・・
「その駆け引きに無理やり巻き込まれた方はたまったもんじゃないわよねぇ
・・・自分の意思じゃなく巻き込まれて、必要なくなったらサヨナラ、なんて
駆け引きじゃなくて、まさに詐欺ってもんじゃないの?」
・・・・・それは一体、ダレのことを言ってるのでしょうか、カオリサン?
それこそ、挙げればきりがないであろう「対象」が脳裏をよぎる
先ほどの比ではないほどの、妙な冷や汗が背筋を流れ、香にバレぬようごくりと生唾を飲み込む
(これは、アレか?もしかしなくても・・・俺へのあてつけか?)
た、確かに前の依頼人も最後のほうには俺に好意を寄せてきたが、
ちゃんと俺はケジメはつけてたぞ!?
何よりな、気落ちしてる依頼人に少しでも笑顔を取り戻してほしいというのは
至極まっとうなことじゃねぇの!?
・・・と内心でいくら思っていても、静かにコーヒーをすする香の妙な迫力に飲まれ
一言すら言えてないんじゃ意味ねぇんだが
(・・・あ、あれ?ボキしゃん裏世界でNo1スナイパーのはずのだんだけどー・・・・)
それがまだまだ素人レベル同然の相棒に頭があがらんとは・・・・
自分の命を狙うやつら・・・・いや、過去の自分に今の姿を見せたら、それこそどんな顔をするのか
内心それそれで面白そうだなと思いつつ、ひそかに口元を上げる
・・・が、それもすぐに消し去り、いまだに何を考えてるのかわからん相棒へと意識を集中する
(さぁ・・・て、どうしたもんかねぇ・・・・)
今の香はいつものように怒り狂ってるわけでも、自分を卑下してしょげているわけでもない
別にこれぐらいなら放っておいてもいいんだが・・・
放置すればしたでなにかと面倒な方向へ行くことも否定できないんだよなぁ
かといって下手に手を入れてもこっちに火の粉がくるだけ・・・
これは慎重にいかんとな・・・と考えを巡らせていると、
静かにコーヒーを飲んでいた香が「あっ」と小さく声をあげ
じーーーーーーっと俺を眺めだした
「・・・か、カオリしゃん?」
「・・・・え?・あー・・はははは・・・な、なんでもないの!き、気にしないで!!」
まじまじと俺を見てきたと思えば、急にビクっと体を震わせ弁明する香の姿に
俺はさらに脳裏にはてなマークを浮かべざる得なかった
むしろ、浮かべるなっつーほうが無理だろうさ・・・・
まぁ、アイツはアイツで答えを見つけたんだろうが・・・こっちは振り回されるだけ振り回されて
なぁんも知らされずに終わるつーのはねぇよなぁ
どこか機嫌良さげに自分のカップを持ってキッチンへと向かう香の後をこっそり気配を消して追いかける
「ふふふん、ふふーーん♪」
(あんれまー・・・上機嫌に鼻歌まで歌っちゃって・・・・さっきまでのしかめっ面はどこに置いてきたんだか)
「・・・・・なぁに鼻歌なんて歌ってんだよ」
「え?ひゃぁっ!!?ちょ、ちょっと!僚!!気配消して近づくなって何度いったら」
「あー?しょうがないだろーが、もうこれはクセみたいなもんなんだしー、それに気配を読むのが苦手な
カオリちゃんにはいい訓練になんでないのー?」
香の驚きを横目に、「訓練」という名の大義名分を掲げてみれば、香は香で悔しそうに顔をゆがめながらも
「わ、わかったわよ!!それで、なんの用なわけ!?」と喧嘩でも挑むかのようにギっとこちらをにらんできた
そうそう、おまぁはそうやって感情を素直に表にだしてりゃいーんだよと、内心ニヤリと笑みを浮かべ
「さっき俺を詐欺師扱いしてくれたわけだしー?一応どうしてそうなったのか聞こうと思っただけさ」と
さも何でもない風を装い返事を返した
「あ、あぁ、アレ?・・・・べ、別に深い考えなんてないのよ?
た、ただ、もしもアンタがスイーパーじゃなかったらって考えた時にさ、
普通に暮らしてる姿が浮かばなくて・・・んで、どんな職業だったらしっくりくるかなぁーって思っただけ」
「・・・・で、詐欺師ねぇ、それはそれでかなりヒドイ答えなんでねぇーの?」
「ご、ごめんってば!!!べ、別に100%アンタが詐欺師になるなんて思ってないのよ・・・ただ、その・・・まぁまぁうまくいくんじゃないのかなーぐらいで、さ」
(ということは、80%ぐらいは本気で考えてたわけね・・・・ハハハ、リョウちゃんちょっと傷つくかもー・・・(汗))
まぁ、確かに下手な詐欺師よりはマシに取り繕うことはできるだろうが・・・
それにしても詐欺師ねぇ・・・・ほんっっと突飛なこと思いつくよなぁ
一回香の思考回路がどうなってるのかマジで見てみたいもんだな
そうぼんやりと考えていると「け、けどさ、やっぱり詐欺師もアンタにはできないと思うのよ!!」と
やけに気合いをこめて香が俺を見上げてきた
(・・・・ったく、普段だったら真っ赤になって離れる距離だっつーのに、
今は興奮してるのか一切気づいてないでやんの)
しょうがねぇなぁと溜息をつきつつ香にバレぬ程度にわずかに体制を整える、これ以上香が近寄ってきたらそれこそ二人後ろに倒れこんじまいそうだからな・・・ま、これで香を抱えてても受け身ぐらいは取れるだろうさ
そんな俺の考えなど知りもしないで、香は妙に興奮した様子で口を開いた
「アンタってさ、嘘はそりゃたくさんつくけど、一度約束したことは極力守るものねぇ・・・これって詐欺師にとっては致命的じゃない?」
「だから、アンタは一流のスイーパーを辞めたとしても、一流の詐欺師にはなれないってわけ、どう?あたしの考え?」
まるで自分の推理があたってるでしょ?と問いかけてくる子供のように目をキラキラさせている香に
俺はなんと声をかけていいのか一瞬わからなかった
黙る俺に、香は不審そうに小首をかしげ「りょう?」と呼びかけてきやがった
「・・・・・どうって・・・・・おまぁ・・・・いや、なんでもねぇ・・・ボキしゃん部屋に戻って昼寝してくるわー」
「へ?ちょ!?りょーぉー!?」
まともに相手をすることを放棄し、俺は香の呼び声から逃げるようにさっさと自分の部屋へと戻った
そしてパタン・・・・と扉を閉じたと同時に、俺は今日一番の盛大な溜息を吐きだした
「・・・・・ほんっと、アイツといると退屈することがねぇなぁ」
『アンタってさ、嘘はそりゃたくさんつくけど、一度約束したことは極力守るものねぇ・・・』
あの意味を、アイツはちゃんと理解してるのかねぇ
海原のとき、そして海坊主のときにした誓いもまた、『約束』の中に入ってる
つまりは・・・・絶対に違えたりなどしない・・・つー意味にになるんだが
「あの分じゃ、そこまで深く考えてないだろうな・・・・」
本当に天然ってもんはやっかいだな、と一言つぶやき
俺は有言実行とばかりにベッドの上に寝そべった
≪ Dolls | | HOME | | 魔王と天使 1 ≫ |