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proof





もし、この世に運命の女性と呼べる女がいるのなら
それは、俺の場合・・・間違いなく彼女だと思う

最初に「僚の友人なんだ」と言ったら、パッと花が咲いたように笑った笑顔はとてもcuteだった
かと思えば、不埒なことをしようとする俺に向かって容赦なくハンマーを振り下ろしてきたり、はったおしたり
・・・・・普通の女の子たちなら揺れ動いて落ちてくるというのに、カオリは・・・・いくら揺さぶっても、落ちてはこなかった


かわいらしい少女の顔から
恥じらう乙女のような表情
かと思えば、僚の相棒という誇りを持った凛とした態度


見れば見るほど、俺は、彼女に夢中になり・・・・最後には本気になっていた
ターゲットとして、ではなく・・・・一人の女性として、欲しくてたまらなかった

だが、俺のそんな想いを知ってもなお、カオリはリョウを選び
リョウもまた、・・・・アイツらしいひねくれた牽制だったり邪魔をしたりしつつ、しっかりと香の手を掴んで離さなかった
最後に、二人の絆の強さを見せつけられたからか・・・
それとも、香のあの笑顔にやられたからか・・・
リョウを倒してカオリを手に入れる、ということよりも
カオリにずっと笑っていてほしい・・・・なんて、らしくもない考えになってしまった

最初に二人の元から離れたときは、アメリカという別の国で、二人のためにできることを精一杯やるつもりだった
たとえそれた俺の命を危険に晒すことになっても・・・・
・・・しかし、結局は敵の手に落ち、エンジェルダストを打たれて狂戦士(バーサーカー)と成り果てたんだけどね
そして、誰の声も聞こえない、自分の意識すらはっきりしないあの状況で・・・・俺は、女神の声を、確かに聴いた


『あたしよ!!ミック!!』


『香よ・・・・思い出して・・・・・・お願い!!』


(泣かないで・・・・・カオリ・・・・)


君には笑っていてほしいんだ
俺のために、泣かないでおくれ・・・・My Dear(愛しいひと)


沈んでいたはずの俺の意識を浮上させ、ギリギリの意識のなか無我夢中で自分の躰を止めた
・・・・結果、常にこの白い手袋をつけていなければならない、使いなれた銃一丁まともに撃てなくなってしまったけれど
それでも、俺はあのとき幸せだった
愛する人を守れた
リョウではない、俺が俺自身から、彼女を守れたんだ・・・・・これほど誇らしいことはなかったさ
一時でも、リョウからあの特別な立ち位置を奪えた、彼女の心を俺で満たすことができた
あの場所で死んでいたとしても、きっと俺は後悔しなかっただろうさ・・・・それくらいに、俺は彼女を、カオリを・・・愛してたんだ


カオリ・・・・俺は本気でキミを愛していたんだよ
カズエという新たな愛する人を見つけても、なお・・・キミに対する想いを完全に捨てきれずにいた
それに気づいたリョウのバカに何度も威嚇や邪魔をされたかわかりゃしない
カズエからも、責めるような切ないような目で見られたこともあったさ
申し訳ないと思うよ、彼女が俺を愛してくれているのはよくわかったからね・・・
それでも、キミへの想いは昇華できずくすぶったままなんだ・・・・・




「・・・・・・いい加減、諦めたらどうなんだ?」


珍しくひとり、密かに想いと共に静かに酒を煽っていたというのに
どこからかぎつけたのか、俺の運命の女神決して離さないバカ男が、そこにいた


「諦められるものなら、とっくに諦めてるさ」


「何が」という主語はあえて言わずに、俺は酒を傾ければ
ヤツもヤツで諦めているのか、それとも呆れているのか、何も言わずに俺の隣に腰を下ろし酒を頼んだ
しばらくの間、お互い何も言わず、黙って酒を傾けていた
カラン・・・・と涼やかな音をたてる氷と琥珀色の液体に、再び彼女の姿を浮かび上がらせていると
まるでそれを阻止するかのようにヤツの声が邪魔をしてきた


「そーいうのをな、日本語で不毛つーんだよ」


その言葉を、俺は一瞬うまく理解することができなかった
いつものヤツであれば、ガキのようにふて腐れたりすることはあれど、遠回しの嫌味だったり牽制だったりと
決して直接的な言葉など自分の口から言うことなどなかったというのに・・・
驚く俺を嘲笑うかのように、僚はタバコをふぅー・・・とふかしてみせながら
ポツリと「Between two stool the tail goes to ground」と日本にきてから滅多に聞くことのない僚の英語を耳にした


「それは忠告か?それとも牽制?」

「さぁ、俺は男にゃ優しくないんでな自分で考えるんだな」

「・・・・まったく、友達がいの無いヤツだ」


カラン・・・と残り少ない酒を煽りながら吐き捨てる
・・・・・・・・・・・本当は、わかっているのさ
この想いが不毛であり、さっさと昇華させてしまったほうがいいことなんて
彼女は今も、昔も、この憎たらしい男しか目に入っていないし
こんな俺でも、愛してくれるカズエという存在もいる

・・・・・・それでも




「アレは、最初から最後まで、俺のだ」



おかわりを頼もうと口を開きかけた瞬間、聞こえた台詞に本日二度目の驚きが襲う
今までで一番の直接的な言葉と、確固たる意志であり、殺意と敵意が俺を襲う
ただただ、呆然とする俺を横目に、まださほどしか飲んでいないというのに、席を立とうとするリョウ
俺は咄嗟に口を開こうとするが、それよりも一瞬早く、『理解』してしまった


(あぁ・・・・コイツ、とうとう、カオリと・・・・・)


穢れなき天使、永遠の女神
ついに彼女がヤツの手によって捕えられたのだと思うと、胸がえぐられるような痛みが襲う
・・・・だが、同時に、彼女の想いがようやく報われたのだという喜びも混じる
俺は自分が怒っているのか、悲しんでいるのか、喜んでいるのか、それすらわからなかった


「・・・それでも・・・・・・彼女が涙で頬を濡らしていたら、俺はその涙を全力で拭いにいくし
温かな場所を捨て去ってでも、彼女のために行動するさ」



出ていこうと背を向ける男に、それでも何かを言いたくて出た言葉は
思いのほか、すんなりと自分の中に落ちてきた
そう・・・・そうだ
きっと、俺は彼女が涙の雨にくれ、傷つき倒れそうなら
全てを捨てでも彼女のもとに駆けつけるだろう・・・
例え親友という名の男と再び銃を向けあうことになろうとも
例え俺なんかを愛してくれた女を泣かせる結果になろうとも


俺にとって、・・・彼女は
マキムラ カオリ は、一生涯変わらないほどの特別で、愛しい・・・・女神なのだから
一生彼女に伝えることのない、決意を、目の前の恋敵に向かって言い放たてば
リョウはゆっくりと、振り向き・・・・・そして



「俺が、奪われるような隙をみせると思うか?」



・・・・・・・あぁ、本当に、彼女はとんでもない男に好かれてしまった
日本では随分丸くなったと思っていたが、やはりリョウはリョウでしかないのだと
今さらながら痛感する

アイツは昔から、一度こうと決めたら徹底するんだ
こちらが呆れるほどの完璧主義者
狙った獲物は決して逃しはしないし、一瞬の隙さえ命取りになるほどの徹底ぶり
臆病がゆえに、自信があるがゆえに、誰よりも完璧にこなしてみせる、不可能と思われることさえ可能にしてしまう
そんなとんでもない男・・・・・それが、 リョウ なんだ


そんなアイツが、自信に満ちて笑って宣言してみせるんだ
俺のこの想いすらせせら嗤って、アイツはカオリをあの腕のなかに閉じ込め続ける
他のヤツに目がいくことなど許さないほどに、がんじがらめにして、カオリを独占する
他人の想いになど気づかせないほどに、リョウという存在でカオリを満たし続ける
きっと、それぐらい簡単にしてみせるであろう男に、もう何も言えるはずもなく
カラン・・・とドアベルを鳴らして出ていく男を黙って見送った




「マスター、もう一杯もらえるかい?」



静寂が満ちるバーで俺はわずかに情けない顔で注文すれば
マスターはただ頭を下げ、酒をつくると黙って俺の前に差し出した
・・・・・・本当に、ここのマスターは気が利く
それとも、今の俺がわかりやす過ぎるのだろうか?と内心苦笑しつつ
俺は出された酒をそっと持ち上げ、誰に言うわけでもなく、そっと口を開いた



「・・・・・・・I love you・・・・My Dear」



一生の片思い、一生報われぬ想いとわかっていても
どうか、どうか、愛しい人よ
君がこの先、涙の雨にくれぬよう・・・ただただ、今はひっそりと祈り、愛を送ろう

 



fin






ミックの香に対する想いと
それを知っていて牽制する冴羽氏
ミックの香への想いは、「愛」なんだけど、恋愛だけではない
言葉では言い尽くせないほどの愛なのかなぁ・・・っと思い、書いてみました
作中の諺は「二つの腰掛けの間で尻餅をつく」
日本語でいうところの「二兎追うものは一兎も得ず」ですね

イメージソング proof song by angela

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