[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
初めて僚と出会った時、僚はあたしを「ボウズ」と呼んだ
最初見たときは、なんでアニキがあんな男と一緒にいるのかわからなかった
真昼間から女のケツを追いかけて、だらしなくて・・・
アニキを悪の道に引きずりこむ最低野郎だとすら思った
けど、少しだけ一緒に過ごした僚は、あたしの想像と違っていた
何も知らないガキの身の上話を黙って聞いたかと思えば
敵地に一緒に連れて行き、ことの真相を見せつけ
最後には、気を失ったあたしを背中に背負って、車まで運んでくれた
僚は、やさしい言葉なんて、くれなかった
慰めてもくれなかった
ただ、淡々と自分が「殺し屋」だということ
その「殺し屋」じゃないとできないことがあるということ
それだけを、教えてくれた
あのとき確かにあたしの中で何か特別なものが芽生えた
それは恋心だったのかもしれないし、そうじゃなかったのかもしれない
ただ、僚のように・・・あの男のようになりたかった
アニキの隣に立っていた僚が・・・羨ましかった
だから、口調を真似て、男のように振舞って・・・・
そしていつか・・・また、会えたらいいなと・・・・思っていた
あたしと、アニキと、そして・・・・僚の三人で・・・・・
・・・・・で、現在
あたしは色々あって、その「会えたらいいな」と思っていた男と
一つ屋根の下で暮らしている
きっかけは、自分から「アンタのパートナーになる」と言い出したから
というのは百をも承知なんだけど
・・・・・なんというか、最初の頃は乙女の夢を全て打ち砕かれた気分だったわ
平気で素っ裸でふらふらしてるかと思えば
依頼人「もっこり一発!!」なんて言って襲うし、夜這いなんて日常茶飯事だし
さらにエロ本、エロビデオ・DVDなんつーもんまで平然と散らかしてる
一生懸命掃除をしても、ご飯を必死に作っても一言だって褒めてくれやしない
きっと、世の主婦の方ってこういう境遇にあるから強くなるんだなぁっと強く感じたわ
アニキとの暮らしは慎ましかったけど、あんまり「異性」っていうものを感じさせない生活だったし
一生懸命頑張れば褒めてもくれた・・・・うん、あれが「家族」ってヤツだと思うのよねぇ
でも、僚との暮らしは・・・「家族」じゃない。でも、「男と女」でもない
なんと形容したらいいのかわからない、そんな曖昧な関係
依頼人からは「メシスタント」、周囲の仲間内からは「もはや夫婦よね」
なんてからかいの言葉をもらうけど、実際はどれも違うのよねぇ
・・・・上手い言葉が見付からないけど、やっぱり「仕事上のパートナー」が一番合ってるのかもね
家族のような無償の愛情はない
かといって、恋人や夫婦というった愛情もない
けれ、確かにわたしたちの間に何かしらの「特別」がある
それは・・・・・好意に似て、愛情とは違うもの
・・・・なんとなくだけど、この関係こそが「僚」という存在を表してる気がするのよねぇ
僚はあたしを、表立って甘やかさないし、やさしい言葉もくれない
けれ、・・本当に助けて欲しいときは・・・・なんだかんだ言って助けてくれる
僚をおびき出すために敵に拉致られても
命が危険に晒されたときも
僚は必ずあたしを見つけ出しては、助けてくれた
どんなにあたしが大きな失敗をしても、叱ることはあれど
絶対に見捨てたりなんてしなかった
寂しさに潰れそうになったときも
まるであたしの気分を誤魔化すようにわざとバカなことをしてあたしを怒らせたし
それが原因で口喧嘩に発展しても、ハンマーで潰されることになっても
その日だけは・・・・外に出かけずに、一緒にアパートにいてくれた
僚は、僚にしかできない不器用な優しさを・・・あたしにくれた
その優しさを、あたしは一言じゃ表現できない
僚も僚があたしにくれるものも・・・全部
でも、あたしは・・・そんな僚以上に不器用なんだと思う
敵から助けてもらえても
寂しいときに傍にいてもらえても
あたしは・・・・滅多に自分から「助けて」と手を伸ばせない
「寂しい」と縋りつくことができない
あたしからアクションを取ることができない
「いつか、また会えたら」という受け身でいたときと同じ
あたしはまだ、ちゃんと僚と向き合えないのかもしれない
あのときとは違う、信頼関係があっても
あのときと同じ、弱い自分のままでしかない
傍に僚がいるのに、振り向けない
その手に、腕に、縋りついて甘えたいのに、甘えられない
ううん、甘えちゃ・・・いけないんだ
「甘えたら、最後・・・・・どっかに飛んでいっちゃうもんね」
たぶん、僚はあたしが甘えたいと言えば・・・なんだかんだ言って甘えさせてくれる気がする
それこそ、あたしが望むような・・・甘い夢を・・・・
・・・・・けど、それはあくまで「夢」でしかない
目が覚めたら・・・きっと、僚はもう傍にいない気がする
甘い残り香だけ残して、風のようにその姿はどこにも居ない・・・・
そんな気がしてしかたがない・・・・
「あーあぁ、結局・・・・先に惚れた方が負けなのかなぁ」
バタンとベッドに倒れこみ、リョウちゃん人形を抱きしめる
散々文句を言いながらもここに居る理由も
アクションを起こせないのも・・・
全部、あの男を少しでも長く繋ぎとめておきたいから
他の理由も・・・・きっと、突き詰めたら・・・「僚」に関係するものばかりな気がする・・・
(あー・・・・あたし、どんだけあのもっこりバカが好きなんだろ・・・・)
よくよく考えたら初恋も・・・なんだかんだであの男なわけで
その初恋をバカみたくずーーーっと追いかけてさぁ・・・・
花も恥らう乙女の夢までぶち壊されて・・・・本当に冗談じゃなくお嫁にいけないつーの
「いっそ・・・・責任、取ってくれたらいいのに・・・・」
ポツリと呟いた自分の台詞に・・・あたしは一瞬思考が止まり・・・
次の瞬間にはドカンと音をたて、これ以上無いというほど真っ赤になった
(な、なんちゅーこと考えてるんだあたしはぁぁあああああっ)
そもそも、僚はあたしに対して恋愛感情なんて持ってないし!!
そ、そんな、せ、責任なんて・・・・そんな、そんなことってっ!!
自分の考え付いた答えのあまりの恥ずかしさに
あたしは、ベッドの上でジタバタと暴れまくった
結局、あたしはその夜まともに寝ることができず
翌日、僚からそれはそれは不審そうな目で見られるはめとなった・・・
「real Emotion」 song by 倖田 來未
≪ Liar! Liar! | | HOME | | Looking Back on Your Lover ≫ |