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一段と寒い日、あたしは白い息を吐き出し手を温めていると
ふと、感じたソレに、ちょっとだけ、上を向いた
「・・・・雪」
頬を撫でる冷たい結晶に、ポツリと言葉を漏らす
しばらく上を向いていたもの、人ごみが流れると同時に
あたしも慌てて人の流れに乗り、新宿の街を歩きだす
(・・・・どうりで寒いわけだわ)
もう一度だけ空を見上げ、ゆっくりと前を向き
・・・・そして、僅かに逡巡した後、あたしは歩きから、走りへと行動を変えた
別に誰かが待ってるわけじゃない
待ってるのは冷たい部屋だけ
でも、なんとなく・・・なんとなく・・・・
はらはらと舞う雪
冷たい空気
個人に意識を向けない人ごみ
その中を、あたしは必死に走った
走って、走って、そして・・・誰も居ないアパートに飛び込んだ
「ははは・・・本当はキャッツに寄ってあったかいコーヒーでも飲みたかったんだけどなぁ」
走ったせいで熱い体に冷たい空気が心地よい
けれど、やっぱりどこか冷たい・・・
「・・・・さぁって、今日はお鍋かなぁ」
最近野菜が高いけれど、なんとか安い食材だけで作れるお鍋を考えながら
先日終えた依頼から、経済的に余裕があるため暖房のスイッチを入れてキッチンへと向った
それから1時間ぐらいしてから、いつもよりもわずかに慌しく僚が返ってきた
バタンっと乱暴に開けられた扉に、あたしが思わずビクッと身体を震わせ振り返れば
そこには、わずかにぽかーん・・・とした顔の僚がいた
「ど、どうしたのよ、僚」
「い、いや・・・まぁ・・・・その、なんだ」
「・・・・・なによ、言いたいことがあるなら言いなさいよ」
ムッとして腰に手を当てながら言えば
僚はわずかに、困ったような顔をして、「情報屋が血相変えて来たんだよ」と漏らした
「・・・・・なんて?」
「おまぁが、全速力で走ってたつーから・・・、まぁ、この間の依頼もあるしぃ?
まぁたメンドイことになったのかなぁっと思って戻ってきたの」
「あぁ・・・そういうこと・・・・ごめんごめん、ちょっと急いで帰りたかっただけよ」
「・・・・あん?、財布かなんか忘れたのか?」
「違うわよ・・・・ホラ、雪が、降ってたでしょ?だから」
「雪ぃ~?」
確かに外を見ればチラホラと雪がまだ降っている
はらはらと音もなく降り続ける雪
その白い結晶に一瞬目を向けるものの、香が慌てて帰ってきた理由はわからず
首を傾げていると、香はそんな僚に目もくれず「ほら、ご飯できてるわよ」という声がかかった
「・・・・雪、ねぇ」
真っ白な息
真っ白な結晶
静かな街
ひとごみの音
その中を走って見つけたのは・・・・・
「まさかな・・・・・」
わずかに慌てて見上げた先にあった灯りと
扉を開けた瞬間の暖かい空気に・・・・わずかにホッとした自分に
僚は内心苦笑しながら、「今日こそうまいもん食えるんだろうなぁ?」と声をかけて
足早に香の元へと向った・・・・
「Snow Dance 」 by DREAMS COME TRUE
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