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夜の新宿、表通りがまだまだ賑やかなこの時間帯に
まるで隠れるように路地裏を歩く男女が一組
どちらの顔にもわずかばかりの疲労の色が見え隠れし
かつ、表通りを歩けば「何をしていたのか」という職務質問がなされることは間違いないほど
2人の服装はボロボロだった
「失敗したわ・・・まさかあんなところに、あいつらも火薬類置いてたなんて」
「あー・・・確かになぁ、爪が甘かったくせに随分と準備はしてたみてたいだからなぁ」
「もう少し頭のキレるヤツでもいたらもっと時間かかってたことは間違いないわね
よかったぁ、おつむの弱いヤツの集まりでw」
にこにこと笑いながらも、そのひきつった口元と棘のある言動
さらに額に浮かぶ怒りマークに、男はわずかばかり女から距離を取り口を開いた
「・・・・随分とご機嫌斜めじゃねぇの、香ちゃん?」
「・・・そりゃぁそうでしょうよ、なんたってあいつ等のせいでついこの間買ったばっかりのこの服ダメにされたのよ!!?
こんなにボロボロじゃもう着れないじゃないっ!!・・・はぁ、ようやく決心して買ったのにぃ~」
案の定怒りに顔を染めながら、握りこぶしを作り怒り震え激昂する女に
男は内心「だからいつも以上に暴れてたのか」と妙に納得し
先ほどまでやっていたドンパチ騒ぎを思い出していた
普段は後方支援に徹する香が、途中からやけに過激なトラップを作っているとは思っていたのだが
まさか服の恨みだったとは・・・・
「服の一着や二着、また買えばいいだけの話だろうが」
「これはバーゲンを待ってようやく手に入れたヤツなのっ!!・・・前から欲しいなぁって思って
ようやく手に入れたヤツだったのに・・・もぉ、本当に嫌になるったらっ!!」
そう言うと女はプイっとそっぽを向き、スタスタと歩きだした
どうやらこれ以上言っても無駄だと思ったのだろう
必死に怒りを沈静させようとする女の後姿を見ながら苦笑する
そのまま僚は珍しく香の後ろを黙ったままついていき
香は香で何か考え事をしているのか、二人の間に沈黙が流れた
ふと、ふわりと夜のビル風が流れ、香の少し伸びた髪をなびかせ
後ろを歩いていた僚の鼻腔をくすぐる
土ぼこりと、火薬の匂いが混じった【香の匂い】
(まぁーったく、すっかり慣れやがって)
火薬を扱うことも、ローマンを握ることも、自分という男の傍にいることも
当たり前のように慣れてしまった様子の女にそっと苦笑する
本来であれば、火薬や銃などという物騒なものとは無縁で
自分のような男の隣になどいるはずもなかった女
それこそ、今のような、アフターファイブを過ぎた辺りの時間なら
表通りを堂々と歩いて、自分の時間を楽しむなり、男と過したりしていただろうに・・・
こんな隠れるように路地裏を歩き、ボロボロになっているなどと、一体誰が想像できただろうか?
(ま、誰もできやしねぇよなぁ、コイツも槇ちゃんだって想像してなかっただろうさ・・・)
普通の生活を送るはずだった女が、【普通じゃない場所】で当たり前に過している
ちょっとしたドンパチをしてきたというのに、その感想が「服がだめになった」という文句だ
まるで何事も無かったように真っ直ぐに前を向き、背筋をピンッと伸ばし歩くその姿は
こんな路地裏であろうとも、スポットライトが当っているモデルのような美しさがあった
(絵梨子さんが惚れこむのも、まぁ、わからなくは無い・・・ってか?)
そう考え、苦いものを隠すように再び口角をあげ、チラリと表通りの光を見た
車のライトの光が行き交うそこは光の川のようにさえ見え
あの中にこの女を放り込み、置き去りにすればコイツは元の、いや
本来いるべき場所に戻っていくだろうか、とふと考え・・・頭を振った
(・・・そりゃ無理ってもんだろ)
コイツを置き去りにして、とっとと自分は逃げたとしても
表の世界に置いて、二度とコチラ側にこれないようにしても
きっとこの女は追ってくるだろう
ハンマー片手に「なにしやがるこのもっこり野郎っ!!」と怒鳴る女の姿を思い浮かべ
想像の中なのに、わずかな痛みを覚えた
「自由にしろ」と言っても「じゃぁ、自由にするわ」と言って傍にいるような女だ
これくらいのことじゃ、コイツを離せるはずがない・・・・
(・・・・まぁ、そもそも置き去りなんつー行為そのものができねぇ可能性のほうが高いだろうがなぁ)
まっすぐと歩くこの女を手放せないでいる最大の原因に、さらに苦笑をもらした
いっそ全てを投げ出してしまおうか、と何度も考えるも
女を見た瞬間におしくなってしまう、離そうとした手を再び強く握ってしまう
投げ出せないのだ、この女を
槇村香という女を、忘れることも嫌うこともできない自分がいる限り
この手は離せない・・・そして、離せないからこそ、傷つけ、泣かせるとわかりながらも道化を演じ続ける
「りょぉー、今日のご飯できあいのものでいいわよねぇ?」
「あー?なんでだよ?リョウちゃん腹減ってんだけどぉー!!」
ようやくこちらを振り向いた女に内心、ビクッとするも
そこは鉄壁のポーカーフェイスでやり過ごせば、やはり香は気付いた様子はなく
手をあわせて、申し訳なさそうな顔を作ってみせた
「あたしもくたくたなの、ね、明日はちゃんと作るから」
「はぁー・・・ったく、しょうがねぇなぁ。んじゃま、明日こそはちゃんと食える飯用意しろよなぁ」
「ちょっと!!なぁによその言い方はっ!!」
「リョウちゃん根が正直だから嘘つけないのっw・・・って、オイ、なんだそのハンマーはっ!?!」
「よく言うじゃない、空腹こそが最大の隠し味って♪・・・というわけで、もっと腹でも空かせてろこのもっこり野郎ぉっ!!!」
「ぎょえええええええっ!!!!」
ドガァアアアアンッと派手に路地裏に轟音と男の悲鳴が響いた
しばらく、ピクピクとハンマーの下で痙攣していたものの
わずかに男の顔に笑みが浮かんでいたことに気づき、香は怪訝な表情で首をかしげた
「何笑ってんのよ・・・キモチワルイわねぇ」
「うっせぇ・・・ったく、ホーント容赦ねぇのなぁおまぁは、・・・んじゃぁ、まっずい飯でも食いにさっさと帰りますかねぇ」
「まだ言うかっ!!!そんなこと言うなら食べなくたっていいんだからねっ!!」
先ほどまでの沈黙が嘘のようにギャンギャンとお互い騒ぎながら裏路地を歩いて行く
そして、位置も男が先頭で、女が男の僅か後ろを歩いていた
(そうそう・・・そうやってろ、おまぁは俺を追って来くればいいんだよ)
内心でそう呟きながら
わずかばかり歩く速度を上げ、2人路地裏を後にしたのだった・・・・
「STYLISH WOMAN」 by米米club
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